文春オンライン

「公安警察の“本気の尾行”からは逃げきれない」元公安の作家が明かすスパイ天国・日本「ホンモノの諜報活動」の実力「酒好き、女好きを協力者に…」

genre : ニュース, 社会

note

協力者の獲得は手順を踏んでいけば必ず成功する

 同様のことは他の場面でも起きますよ。店を予約しないので、駅で待ち合わせることが多いのですが、そこに知り合いの情報担当者が別件の待ち合わせで現れる。二人とも涼しい顔であいさつを交わすのですが、内心ではヒヤヒヤしているんです。誰と会うのかバレたくないので、自分の相手が遅く来て欲しいと願う一方、「あいつは誰と会うんだろう?」と興味津々でしたね(笑)。

――情報交換する相手はまちまちだと思いますが、いわゆる“協力者”というのはどうやって獲得していくのでしょうか?

本郷 マニュアルのようなものはありませんが、相手の性格や気質に合わせて関係の構築を図ります。酒好き、女好き、素直、嘘つきなどプロファイリングをしたうえで、いろんな条件を総合してトライしていく。信じられないかもしれませんが、手順を踏んでいけば必ず成功すると言っていいほど成功します。

ADVERTISEMENT

本郷さん ©文藝春秋 撮影/山元茂樹

小さな変化を見逃さない感覚を身につけておく

――協力者の獲得は「ヒューミント」と呼ばれる人的情報収集のひとつですね。他方で現在は、オープン情報を活用する「オシント」、傍受を中心とした諜報活動である「シギント」の重要性が増しています。日本のインテリジェンス機関では何が重要視されているのでしょうか。

本郷 まず、ヒューミントは1次情報にアクセスするのは不可能に近い。また、オシントは求めている情報が公開されているかわからないですし、シギントはそもそも機械がなければできません。それぞれに問題点があるなかで、各組織が必要とする情報を得るための対策を講じているというのが実情でしょう。

 そんななか、オープン情報のオシントをきちんと把握することが第一に重要です。既に出ている情報だと知らずに、自分が知ったことが「貴重な情報」だと勘違いしてしまう程度のレベルでは情報担当者は務まりません。

警察庁が入る合同庁舎 ©AFLO

 そしてもう一つ。私は「違和感」という言葉を使うのですが、小さな変化を見逃さない感覚を身につけておくことも大切です。常にオシント情報を収集していると、わずかな違和感を感じる瞬間があります。貴重な情報というのはそういうところから掴めるものなんです。

――諜報活動といえば、「張り込み」などをイメージしますが、実際にはどのようにやっているのですか? 

関連記事