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対局中の藤井聡太が突然「ガックリ」 AIの評価値よりも藤井の対局姿勢のほうが“信頼できる”これだけの理由

対局中の藤井聡太が突然「ガックリ」 AIの評価値よりも藤井の対局姿勢のほうが“信頼できる”これだけの理由

プロが読み解く第81期名人戦七番勝負 #2

2023/05/12
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 そして最後に谷川浩司十七世名人。先に40年前の名人戦のことをうかがうと、「あのときは第1局から第3局までの加藤(一二三)先生の出来が悪かったんですよ。その後、力を出されて連敗しましたし(※谷川3連勝→加藤2連勝→谷川勝ちで4勝2敗で奪取)」とふりかえる。

 そして羽生善治“七冠”の話になった。

「羽生さんとの2年連続の王将戦でしたが(※前年は4勝3敗で王将を防衛して七冠を阻止した)、失冠したことよりも、4連敗で終わったことを悔やんでいます。1局でも多く戦えばそれだけ、多くの方々に王将戦が、タイトル戦が、将棋界が、注目していただけるのに、1局も勝てず、長引かせることもできなかったことは申し訳なかったと」

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 私が「翌年に名人戦で羽生さんの矢倉に対し、急戦棒銀で攻めまくって名人を奪取したことが印象に残っています」(※1997年、羽生との第55期名人戦七番勝負を4勝2敗で名人を奪取、名人通算5期で十七世名人の資格を得た)と言うと、「そういう戦法が流行った時期もありましたねえ」と懐かしそうに笑った。

「雰囲気とかムードとかは自分ではどうしようもない」

 藤井が対局中にうなだれていた話を振ると、

「見落とした、うなだれていたと言っても、レベルが高すぎますからねえ。藤井さんが何を見落としたなんて、なかなか気が付かないですよ(笑)。ただ、渡辺さんにとっては、流れが悪いですよね。

 藤井さんの名人誕生を期待する雰囲気になってしまうのはしかたありません。そういう雰囲気とかムードとかは自分ではどうしようもないんです。私は追い風も向かい風も経験しましたが(笑)。その中で渡辺さんが今後どう戦うかでしょう」

感想戦の様子

 渡辺の指し回しは見事だった。藤井が得意とする、バランス型で盤面全体が戦場となるような戦いをさけ、しっかり囲って距離を取って戦った。矢倉党にとっては渡辺の駒組みはとても参考になった。

 だからこそ、このまま終わってほしくない。まだまだ見たい。渡辺の巻き返しを、逆襲を期待する。

写真=勝又清和

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