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大泉潤函館市長の公約「新幹線函館駅乗り入れ」のブレインに「線路」「車両」の構想をすべて聞いた

大泉潤函館市長の公約「新幹線函館駅乗り入れ」のブレインに「線路」「車両」の構想をすべて聞いた

大泉潤函館市長公約「新幹線函館駅乗り入れ」の発案者に聞く #3

2023/05/14

genre : ライフ, , 社会

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――並行在来線と合わせてとのことですが、函館乗り入れの場合は、第三セクターが三線軌条も含めて保有し、JR北海道が第二種鉄道事業として乗り入れるという理解で合っていますか。

吉川 そうです。三線化するのは上り線(札幌に向かい右側)だけです。在来線は複線のままです。三線化を第三セクターが実施した場合、JR北海道が線路を借りて適切な使用料を払い、乗り入れる形になります。JR北海道としては、JR東日本からは独立して函館~札幌間の独自ダイヤが組めるという利点があります。建設費を負担しなければ乗り入れしたいのではないでしょうか。

新幹線車両はJR北海道が購入して準備

――新幹線車両購入費を負担する必要はありませんか。大都市の相互直通運転では、線路使用料を現金で相殺しなくて済むように、お互いに車両を購入して、走行距離を等しくして精算しています。運転士も境界駅で交替します。

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吉川 新幹線車両はJR北海道が購入して準備します。整備新幹線は路線の建設は鉄道・運輸機構が行い、運行する車両はすべて各JRが独自に調達します。JRの保有車両ですから、車両のメンテナンスもJRの保守基地で行います。新幹線車両は特殊なため、運転はJRに委託することになるでしょう。

 在来線車両については並行在来線の枠組みの中で検討する問題です。道南いさりび鉄道と共通運用して車両数を節約してもいいでしょう。

新函館北斗駅の新しい役目

――函館市で2月27日に開催された講演のスライドをいただきました。この末尾に「並行在来線の活用案」「道南・函館の観光について」があります。

吉川 特急「北斗」が新幹線に移行しますから、線路容量に余裕ができて、ローカル列車を増やせます。第三セクターの運営母体が道南いさりび鉄道になるか、新たに設立されるかはともかくとして、車両はディーゼルカーだけになるので、車両を共通運用して効率化すれば経費を削減できます。そこで、五稜郭駅と桔梗駅の間に新駅を設置して乗客の増加を図ろうという提案です。

――たしかに五稜郭駅と桔梗駅の間は駅間距離が長く市街地でありながら、駅はありません。開発の余地もありそうだし、もったいない地域ですね。観光についてはどんなアイデアでしょうか。

吉川 新函館北斗駅から在来線に乗り換えて、函館と反対方向に行くと10分足らずで大沼公園駅があります。観光路線として魅力的ですから、並行在来線会社が新函館北斗駅~大沼公園駅間も運営することは有効だと思います。貨物は存続が決定していて、五稜郭・長万部間の鉄路は残りますから、それを有効活用しない手は無いですよね。