もうひとつの理由は「リピーターを増やすため」だ。どういうことかと言えば、スタンダードシートの乗客が6号車に行く途中で、プレミアムシートを通り、コックピットラウンジを見る。そこで「次はこの座席に乗りたいな」と感じてもらえる。ついでに言うと、浅草駅から乗車すると、改札口に近い1号車のコックピットスイートやコンパートメントのそばを通る。こんな座席があるのか、乗ってみたい、と思わせる。
日光行き「スペーシアX」のライバルは「JR東日本」と「伊豆」だ
ここからは筆者の私見で、東武鉄道には失礼を承知であえて書く。東武特急は伝統的に「その時代の最新鋭車両を超えるデザイン」を作ってきたように思う。
デラックスロマンスカーは、国鉄と東武鉄道が「日光行きライバル競争」をしていたときに生まれた。「国鉄がこだま型電車を日光行特急に採用するかもしれない」という対抗心から生まれたのではないか。そして東武鉄道は見事に勝利を収め、国鉄は日光行き優等列車から撤退する。
先代スペーシアのライバルは東海道新幹線だ。相手が大きいけれど、東武鉄道だって路線長で大手私鉄第2位である。JR東海は300系電車を開発し、新種別「のぞみ」が誕生する。訪日観光客を含めて、東京発の観光客が京都・奈良に流れていく。その人たちを日光に誘おうとしたのではないか。
そう考えると、スペーシアXのライバルはなにか。JR東日本が投入した伊豆方面のハイグレード特急「サフィール踊り子」だ。これらのライバル車両も近年の傑作である。それは誰もが認めるところだ。しかし東武鉄道のほうが豪華さとサービスで上回る。後出しジャンケンは勝たねばならぬ、というわけだ。
少子高齢化によってライバル関係は拡大
かつて日光行き特急でライバルだった東武鉄道と国鉄が、スペーシアの新宿乗り入れで仲良くなった。しかし、こんどは「東武鉄道の日光」と「JR東日本の伊豆」という、観光地同士のライバル関係が始まった。日光地域の企業、商店も、復活しつつある観光需要を期待し、スペーシアXに託したと言える。