「未来ある若手の、若い子がまた同じ目に遭って…」
「これから新しく生まれる、未来ある若手の、若い子がまた同じ目に遭って、それも親も知らずに『ジャニーズ事務所だから安全』だとか……。そういうことは絶対ありませんから。それだけ言っておきます」
このメッセージをマスメディアが取り上げて、当時周知されるものになっていればと願わずにはいられない。それほど34年前の北公次さんの語りは真剣なものだった。だが、テレビをはじめ、マスメディアがその後「沈黙」したことで被害を未然に防ぐことはできなかった。北さんの後輩たちへの思いが実ることはなかったのである。それが告白ビデオの内容を報じたことで伝わってくる。
ただ番組では北さんから直接アドバイスを受けて退所の道を選んだ元ジャニーズJr.の証言を放送している。彼も北さんとともに告白ビデオに出演して性被害を訴えた元ジャニーズJr.の一人だ。
「(北さんは)人生がボロボロになっちゃうから俺みたくならないように今辞めろと。熱心にもう(レッスンには)行くなと。すごい親切というか、僕のことを思って言ってくれているなと感じたし、北さんがいたから僕は辞めて、やってこれたと思います」(ビデオで証言した元ジャニーズJr.の男性)
「週刊文春」が本格的にキャンペーン報道を始める1999年より10年も前に北公次さんは書籍とビデオでジャニー喜多川氏の性虐待を告発していたのだ。再発防止特別チームの会見後には、TBS系の他番組でもこのビデオについての報道が続いた。
問題を訴え続けて「残ったのが僕だけでした」
特別チームの会見翌日、8月30日(水)に放送されたBS-TBS「報道1930」。平日夜にスタジオに専門家を呼んで議論する報道番組だ。司会は編集長を兼務する松原耕二氏が務めている。旧統一教会の問題などの調査報道が高く評価されて、今年のギャラクシー賞では大賞に次ぐ優秀賞に選ばれている。
北さんの他に10名のジャニーズJr.たちが告白ビデオの中で性被害を証言しているが、その中にはこの夜スタジオに出演した「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の代表・平本淳也さんもいた。
「抱きつかれたと同時に今度は手の動きが違うんです。身体中をなで回し、触ってくる」(ビデオで証言をする当時23歳の平本さん)
平本さんはBBCのドキュメンタリー「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」でも証言している。この日の「報道1930」で平本さんは、35年におよぶジャニーズ性加害問題を告発する活動を振り返り、感想を求められていた。
「(活動を)始めた当時、著書(『光GENJIへ』シリーズに告白文を寄稿)を書き、今紹介があったようにVTRで告白をし、その時は大先輩である『フォーリーブス』の北公次さんが先導してくださった、その後を追いかけたという形になります。当時、僕と同じような被害にあったという人が数十人いたという組織的な仲間の中で活動、行動していたんです。ただ月日が経つにつれて、1人抜け、2人抜け、3人抜け……残ったのが僕だけでした」