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「自分たちは『ゆでガエル』になっていないでしょうか」己の存在意義を見失うテレビマンも…それでも「地方局」が絶対に必要な理由

「自分たちは『ゆでガエル』になっていないでしょうか」己の存在意義を見失うテレビマンも…それでも「地方局」が絶対に必要な理由

『テレビ局再編』より #2

2024/01/29

genre : ニュース, 社会

note

 それだからこそ、「未来へのビジョン」を持ち、次に来る時代に向けた一手を打つべき時なのだと思う。それは、テレビマン一人では、放送局一社では考えつかない、準備しきれないものかもしれない。

 しかし、そのためにネットワークがある。ネットワークの仲間がいる。仲間と「次の一手」を考え、そして挑む。テレビ経営はそういう位置にあるのではないかと思っている。

地域力というパワー

 テレビが打つべき、次の一手。テレビが持つべき「未来へのビジョン」。それを考える時に再確認しておくべきことがある。テレビの基礎、とりわけ地方局の在りようだ。それはテレビがこの先も続くにあたって、求められ、変わらないものだ。

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 地域社会において地方局は必要にして不可欠な存在だと思う。そこから送り出される「ジャーナリズム」「安らぎ」「笑い」「感動」等々。そして、放送という枠の外においても、地方局は地域社会から多くのものを求められ、期待されている。地方局は、地域という共同体を維持・運営するための役目も果たさなければならない。そのための力を私は「地域力」と定義づけたい。

「地域力」の最たるものは、ローカル・ジャーナリズムだ。地方局は、地域における最も強力な情報発信拠点だ。丹念な地域取材を行い、身近で不可欠な情報を掘り起こす。そして、地域全域にそれらを伝える。そうした情報が地域社会を支えている。

「地域力」は、地元の自然災害や有事に際して大いに発揮される。

 地方局の社員・スタッフは決して多くはない。しかし、一朝事あれば全員態勢でそれに臨む。地震や津波、噴火や火災。時には、隣国からのミサイル発射もある。そうした有事に地域が見舞われた時、彼らは昼夜を分かたず、伝えるべき情報を一刻も早く地域に伝えようとする。そのことが地域と地方局の「信頼の絆」を強めている。

 情報発信はまた、全国に向けても行われる。地方局発、全国へ。テレビネットワークがそれを可能にする。その時に地方局は地域を代表する「顔」になる。

 全国の大半の地方局がそれぞれの地域で夕方のローカル・ワイドに鎬(しのぎ)を削っている。放送時間の長い局では、平日3時間を超えるナマ放送が行われている。ある地方局は「生放送、双方向、得する情報」というコンセプトを30年以上、守り続け、歴代の制作者たちの創意工夫によってそれは続いている。こうなると番組は局のものではなく、地域社会のものである。

 そうした長寿番組が地方局には多い。東京発の全国ニュースより、地域発のローカルニュースの方が地域社会から高い支持を得ている。それが伝える「ジャーナリズム」は地域社会にとってはなくてはならないものだからだ。