“同世代のトップ”である野原女流初段のこと
――内山先生の世代で筆頭というとアマ時代の実績では1学年上の野原未蘭女流初段でしょうか。女流アマ名人戦3連覇や、アマ代表として出場した女流プロ棋戦で、かなり勝たれていました。
内山 そうです。私は「野原さんに勝って自分が!」とか思わないタイプで、将棋の知り合いとの会話で野原さんの話題が出ると、一緒になって「野原さんすごいよねー」なんて言ってました(笑)。何度もアマ大会で対戦しています。私が中2、野原さんが中3のときは山形県天童市で行われた全国大会・中学生選抜の決勝で当たって負けました。
――中学生選抜は男子の部と女子の部がある大会で、全国から同世代の女の子が集まり、関東とか地区別に「ほほえみの宿 滝の湯」の大部屋で2泊して、とても楽しいという話を聞きます。
内山 みんな、なかなか寝なくて夜まで楽しかった。私は東京都代表で中1のときは関東部屋だったのですが、中2のときは、なぜか富山県代表の野原さんと一緒の部屋でした。下馬評というか野原さんと私が勝ち上がるんじゃないかと言われていたので「えっ、同じ部屋?」とちょっとびっくり。野原さんもそう思ったのか、いつの間にか違う子と部屋を交換していて、別部屋になっていました。
仲が悪いわけではないです。ロビーに卓球台があり、そこに女子で行って野原さんも一緒に卓球しましたよ。消灯時間になって真っ暗になり引き揚げたら、次は男子がやってきて暗闇の中、卓球していました。真剣勝負の大会の他に、リレー将棋の時間もあって男子の将棋友達も増えました。
――今、女流棋士になっている方も中学生選抜にはたくさん参加されていますね。他にも交流を深めた方はいますか?
内山 中1のときは、深夜12時に愛知県代表の磯谷祐維女流初段が部屋に来てくれて、磯谷さんの中飛車と右玉で2局練習将棋を指しました。磯谷さんが2学年上です。私はそのとき、ベスト8で負けてしまい3日目に残れなくて(大会最終日の3日目は決勝戦と3位決定戦のみ行われる)磯谷さんは決勝に進んでいました。翌朝の決勝で磯谷さんが優勝しました(準優勝は榊菜吟女流2級)。
――中1の7月には、男女混合大会の中学生名人戦で3位に入っていますね。
内山 ベスト8か16は2日目に進む形式で、まさか残れると思っていなくて、その日は他の大会に申し込んでいたのをキャンセルしたくらいです。3位は当時の女子の最高成績タイで石本さくら女流二段以来(この5年前の2012年に3位に入った)と言われました。ただし、翌年、野原さんが女子では初の優勝を飾って話題になり、私の3位はかすみました。でも、野原さんの活躍が悔しいとは思わず、かすんで構いませんでした。