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4 『月ぞ流るる』澤田瞳子(文藝春秋)
ドラマを見て、平安時代の華やかな宮廷社会や、貴族たちの、現代を生きる人々以上に過酷な出世競争に興味を覚えた方には、ぜひそれらを堪能できる小説作品に手をのばしてみてはいかがだろうか。
もちろん田辺聖子さんや角田光代さんをはじめ名だたる作家が手掛けた『源氏物語』の現代語訳もオススメなのだが、ここでは直木賞作家・澤田瞳子さんが昨年刊行した、平安時代を舞台にした長編小説『月ぞ流るる』を。
鳳稀かなめ演じる倫子の教育係・赤染衛門が主人公
物語の前半、まひろは土御門殿に出向き、のちに道長の妻となる倫子(黒木華)の教育を兼ねたサロンに参加することで高級貴族の暮らしぶりや考え方に触れていたのだが、このサロンの教師役が、倫子の女房(女官)赤染衛門(鳳稀かなめ)。『月ぞ流るる』は、五十代なかばとなったこの赤染衛門が主人公の長編小説だ。ある毒殺事件の真相を追いかけるミステリー的な展開もありつつも、道長と三条天皇の権力闘争や女性たちの悲哀が、赤染衛門が『栄花物語』を書くに至る道のりと共に鮮やかに描かれる。
物語と歴史は一体相容れるものなのか?
人は歌に何を託すのか?
そして人はなぜ、物語を書くのか?
「平安時代のキャリアウーマン」たる女性たちの活躍が魅力の本作。平安期に書かれた作品のように、折々の心情が和歌で表現されているのも読みどころ。また、少々口うるさい高齢となった紫式部も登場するくだりにも注目だ。