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5 『陰陽師』シリーズ 夢枕獏

陰陽師』(シリーズ第1巻・右)と映画ノベライズ『陰陽師0』(左)、いずれも映画仕様のカバーだ。

 物語の前半、天皇と摂関家との間の血なまぐさい政争の中で、何度となく登場し、いかにも怪しい動きをしているのが陰陽師の安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)。『大鏡』『御堂関白記』『小右記』をはじめ、当時の歴史書にも頻繁に「◯◯が✕✕を呪詛した」と記されているように、平安の世では「呪い」「呪われ」が横行し、天変地異も含めた凶事の原因を死霊や生霊、鬼などに求めることが多かった。

『光る君へ』でも、のちに道長の妻となる源明子(瀧内公美)が父の仇である兼家を呪詛するある種異様なシーンを憶えている方も多いだろう。占術と合わせ、そういった「呪い」を祓う役割を果たしていたのが陰陽師で、安倍晴明は天皇を含む権力中枢からの信頼が篤い陰陽師だった。

シリーズ18巻、平安時代に浸れる人気シリーズ

 陰陽師や安倍晴明をモチーフにした創作は、小説からコミック、はたまたゲームまでさまざまあるが、せっかくなので本家本元・累計700万部の夢枕獏さんの伝奇ロマン「陰陽師」シリーズを手にとってみてはいかがだろうか。

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『光る君へ』が描く時代よりも少し前が舞台で、安倍晴明と源博雅がバディを組んでさまざまな怪異に立ち向かう。作者の夢枕さんにとって「陰陽師」は「ずっと以前から、書きたくて書きたくてかまらなかったのが、平安時代の話であり、安倍晴明だった」(『陰陽師』あとがきより)という念願のシリーズ。人の心に潜む闇や鬼、怨みがテーマだが、読み味は軽やかで、晴明と博雅の友情あふれるやりとりが実に心地よい。最新刊の『陰陽師 烏天狗の巻』はなんとシリーズ18巻目。ハマってしまうとしばらく、この魅力的な陰陽師ワールドを離れられなくなるはずだ。

 奇しくもこの4月には、映画『陰陽師0』も公開。青年期の安倍晴明を演じるのは山﨑賢人、源博雅役は染谷将太。大河ドラマとは異なる晴明の活躍に出会える。映画のノベライズ版も刊行されているので、そちらを手に取っていただくのもオススメだ。 

紫式部と男たち (文春新書)

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