朝だし気流もいいし、最高の気象状況で…

吉村 前日は空戦もなかったんですか。

柳谷 ありません、前日も前々日も。14日で大体ソロモン方面の作戦も終り、一息ついたところですよ。3~4日お休みと言ったら変ですけれども、特別な作戦予定はなく、のんびりしていたんです。

吉村 長官や参謀長の乗った飛行機は、一式陸上攻撃機ですね。

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柳谷 そうです。

吉村 当日の天候はどうだったんですか。

柳谷 良かったです。

吉村 ラバウルからそのまま発ったわけですね。山本長官一行は基地に来ていたわけですか。

柳谷 作戦中にラバウルに来ておられたんです。作戦が終了したので、トラック島にいた旗艦の「武蔵」へ幕僚の方たちともどるについては、さっき言った通り、前線基地の将兵の労をねぎらい励ますために、長官一行はブインの方へ出向いて行くことになったわけです。

吉村 その日の朝、起床は何時でした?

柳谷 起床は、軍隊ですから、5時半とか6時です。それからすぐ飛行場に行きました。長官機は大型機ですから、西飛行場という中攻隊の山の上の飛行場から出発する。ゼロ戦は下の東飛行場から飛びたつ。向こうが離陸した、こっちも離陸――ということで。

南方洋上を飛行中の一式陸上攻撃機の編隊

吉村 ほとんど同時に離陸したんですか。

柳谷 いや、戦闘機のほうが先です。こちらのほうがちょっと先に離陸して、ある一定の高度をとって待っているという形ですね。

吉村 何メートルぐらいの高度で待ったんですか。

柳谷 1500メートルぐらいです。そうしましたら、長官機と参謀長機がまっすぐ上ってきました。飛行中の高度は、一式陸攻が2500メートル、戦闘機隊はそれより500上の3000メートルです。非常にいい天候で、スコールもないし。

吉村 そうすると、すぐ海ですね。

柳谷 ええ、海です。ラバウル湾で集合しまして、一式陸攻の長官機と参謀長機の斜め右の後方に、3機と3機がついて……。

吉村 何メートルぐらい後方なんですか。

柳谷 完全に護衛のできる、敵機がどこから跳び出して来てもすぐ前へ行って落とせるというような位置ですから、何メートルと言いましても……。そうですね、至近距離です。

吉村 500~600メートルですか。

柳谷 そうですね。すぐ見える、抱きかかえるような態勢と言いますか、すぐ覆いかぶされるような、ちょっと後方ですけれども。前には出ませんが……。

吉村 雲なんか、余りなかったんですか。

柳谷 余りありませんでした。雲の中を突っ切っていくようなことは、一回もなかったです。雲はもちろんありますよ。入道雲もあり、いろいろな雲はありましたけれども、朝ですし、非常に気流もいいし、気象状況は最高でした。

吉村 海の上に何か見えたものはありませんでしたか。

柳谷 余り見えなかったですね。輸送船か何か味方の船が、向こうへ向かって行ったり、帰って来るという船が何隻かあったようですけれども……。