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感無量…還暦過ぎてのシリコンバスト

 それはともかく、勢いで再建を選んだが、その先に再び2択が待っていた。

 太ももや腹、背中などから自分の組織を取って再建する方法と、シリコンなど人工物を入れて膨らませる方法だ。それぞれについてのメリット、デメリットを先生に説明されるが、痛いのは1カ所で十分、という理由から、即決でシリコンインプラントを選ぶ。

 続いて先生からシリコンインプラントにした場合に起きる合併症、その他のリスクについての説明があり、乳房の一部が黒く壊死したこわーいカラー写真などを見せられる。だが確率的にはそうしたケースはごく低いことが説明され、異常が感じられたらすぐに連絡をするようにと言われる。

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 続いて乳房に入れるシリコン本体に触らせてもらう。形も大きさも様々な、白く半透明な、柔らかなグミのようなものだ。触り心地はすこぶる良い。

 還暦過ぎてのシリコンバスト。感無量……である。

写真はイメージ ©AFLO

 とはいえ乳がんの手術と同時にシリコンを入れるわけではない。

 切除手術と同時に、胸の筋肉の下に前述したティッシュエキスパンダーという皮膚や組織を引き伸ばす円盤状のものを埋め込む。こちらは白い皿のような無骨なもので、中央に水の注入孔が付いている。術後に乳房に針を刺して注入孔に生理食塩水を入れ、膨らませていく。

 バストに針を刺される。考えただけで痛い。

乳輪はタトゥーで作る…

 膨らませたティッシュエキスパンダーによって、筋肉や皮膚などの組織を伸ばしたところで、8~9ヶ月後に再手術してシリコンを入れる。

 そうして膨らみを作った後に、さらに中心部の再建を行う。乳輪はタトゥー、乳首はもう1つの方を半分取って移植するとのこと。移植できるほど乳首が大きくないので、私は乳輪、乳首の再建はパスして膨らみのみを作ることにした。

 だけど、乳輪をタトゥーで作るって……なんか、すごい話だ。

 一通りの説明が終わると、再建の資料にするために、上半身裸になり、胸のアップ写真を撮る。

 そういえば今ほどセクハラがうるさく言われなかった30年前、某男性週刊誌で「あなたのおっぱい見せてください」というおばかな企画があって、道行く若い女性にこんな感じで披露させているページがあったなぁ、と思い出す。

 形成のN先生がデジカメで正面、横、斜めから手際よく撮っていく。10日後には無くなっちゃうんだからきれいに撮ってね、先生、って違うか……。