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 吉田恵里香は1987年生まれ。いわゆるゆとり第1世代にあたる。つまり社会が勝手に変更した教育システムに翻弄された最初の世代であり、勝手に「ゆとり」などと呼ばれてそれこそ怒りを覚えてきたのではないだろうか。

『ナミビア~』の監督・山中瑶子は97年生まれ。ゆとり世代後期にあたる。そして吉田も山中も「失われた30年」のど真ん中で生きてきた。

 そして、これからの日本を担っていくのは彼女たち以降の世代なのである。

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吉田恵里香さん ©文藝春秋

 偶然だろうか、『虎に翼』がはじまって1ヶ月経った2024年5月17日、NHKがインターネットを通じて番組などを提供することを必須業務とする改正放送法が成立していた。稲葉延雄会長は会見で「放送を主な業務としてきたNHKにとっては、まさに歴史的な転換点を迎えるということになる」と発言。NHKにとって大きな法改正であり、ますますネットユーザーを意識した番組作りが求められる。

 吉田、山中世代はまさに大事にしないといけない層なのである。

朝ドラは『虎に翼』以前以後に分けられるか?

 ここで、冒頭の、『虎に翼』は朝ドラを以前以後に分けられる作品になったかという問いである。答えはイエスだろう。『虎に翼』は歴史的転換点に誕生した朝ドラになった。

『虎に翼』公式Xより

 9月25日放送の『クローズアップ現代』にも時代の寵児のようにして駆り出された吉田恵里香が、『虎に翼』で、女性初の弁護士の1人としておじさんたちの担ぐ神輿に乗せられた久保田先輩(小林涼子)のようにならないことを切に願う。久保田がはじめて法廷に立ったとき、記者・竹中(高橋努)が​​​​​​​​「女性が男性の職場に登用されているのは、戦時に国民が一丸となるために利用されているだけ」と指摘していたようなことには決してならないことを祈る。

 どうかその翼を広げて自由に天高く飛び続けてほしい。それがドラマに自分を重ねた者たちの希望である。ドラマの最終回前日、冤罪事件・袴田事件の無罪判決が出るという良き偶然もあった。