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「歌もギターも俺よりターヘーだけど、やめることはないだろう」

――その前にバーで飲んでいたときは、民生さんはなにも言わなかったんですよね。

トータス なにも言わなかったです。たぶんずっと考えてたんじゃないですか、「あの野郎!」って(笑)。それで「音楽をやめてどうするんだ?」「いや、役者になろうと思ってんのよ」「なれるか、そんなもん!」みたいな感じで怒られて。しかも民生くん、「たしかにお前は歌もギターも俺よりターヘーだけど、それでもやめることはないだろう」って言うんですよ。どんな言い方やと思いません? ターヘー扱いって(笑)。

――そのときまわりにいた人たちはどんな反応だったんですか?

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トータス 「え、なんの話?」みたいになるじゃないですか。それで民生くんが「こいつが音楽やめて役者になるとか、わけわからんこと言い出すんですよ」って説明して、みんなが「えー!」って。そんななか陽水さんだけ、「それ、いいじゃない」って(笑)。「音楽やめるの? いいじゃない」って、しきりに言うんです。

 小林さんもわりと中立っていうか、気持ちはわかるみたいに言ってたかもしれない。「ちょっと煮詰まったんでしょう?」って。でも僕は「煮詰まったんやない。今後も曲を書いたところで、世の中にはすでに曲がいっぱいあるから、もう必要ないやろ」みたいに反撃して。すると、また陽水さんが「すごくわかるよ」って、いちいち肯定してくれるの(笑)。全面肯定。

 陽水さんが言うには、「僕も曲ができなくて、メロ先も詞先もいろいろやり尽くして、なにをやってもできないから、最近はベース先だ」って。なんでもいいからベースラインを先にちょうだいって頼んで、それで曲を作るって言うんです。「ただそれでもできなくて、ベース先にドラム先、全部やったから」って(笑)。

©三浦憲治

民生くんには怒られ、陽水さんには全肯定されて

――曲作りをするとき、メロディーを先に書くやり方と、詞を先に書くやり方がありますけど、そうではなくてベースやドラムのフレーズを先に決めると(笑)。

トータス それが05年だから、陽水さんはまだ50代でしょう? いまの僕と同じくらいとして、僕はまだそんなのやったことない、ベース先とか(笑)。最高な人やなと思って、忘れられないです、そのときのことが。民生くんには怒られる、陽水さんには全肯定される。両方の意見を「はあ」って聞いてましたよ。

 そのあと小林さんは帰って、今度は板谷由夏さんが合流して、4人でバーに行ったんですね。そこでもまた同じ話をして、板谷さんにも相手をしてもらって、朝5時ぐらいに足裏マッサージして帰りました。話はなにも解決せずに(笑)。