商売目的の女性は「ほとんどいない」?

「殆(ほとん)どが娘の戀(恋)愛 『商賣(売)女はゐ(い)ない』と警視廰(庁)」の中見出しで「検挙してみて驚いたのだが、本当の商売女は一人もいない。事情を聴いてみると、ほとんどが娘で、恋愛的な気分で近づいている。若い娘を持つ親たちが日頃から注意してやれば、こんな女にしなくても済むのだろうが。一段、家庭の教化の向上が大切だとつくづく感じた」という警視庁の担当者らしい談話もある。

 あるいは、女性たちの相手はアメリカ人で、「狩り込み」は警察のGHQ向けパフォーマンスと国民への見せしめだったのではないか。

「刈り込み」で検査のため病院に送り込まれる女たち(『画報近代史1』より)

 記事には当時の文部大臣・安倍能成*の“尊大な”談話も掲載。「本当の日本人たる誇りがなく、無批判な西洋崇拝の気持ちがひそんでいることがこういう結果になるのではないか」「戦敗(敗戦)とともに見るのは、実にみじめな日本人の自卑(自分を卑しむ)である。戦敗は全てではない。日本人は今こそ、男女を問わず道徳的に立ち上がるべきである。そのうえ、恥ずべき婦人に対しては、精神的、社会的制裁を加える必要がある」。

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*夏目漱石の弟子で、哲学者・教育家でもあった 

 さらに「とうとう私の憂えていたことが実現したわけですね」という詩人、深尾須磨子の談話も見える。

300人余りが検挙、「狩り込み」は続いた

 同年3月9日夜から10日朝にかけては、品川駅付近のホテルを中心に300人余りが検挙されるなど、その後も「狩り込み」は続いた。

「夜の女」300人検挙の記事(朝日)

 そんなさなかの1946年8月29日付毎日の投書欄「建設」に1人の女性の声が載った。