――新入会員について気をかけることはありますか。

佐藤 入会後、1~2年はフワリとしている子も多いですが、そのことで特に注意するということはないですね。私もそうだったというのもありますが、ほっておいても皆、自然と戦う顔になってきますし、そうでないと話になりませんから。

――奨励会時代の佐藤さんに、佐藤幹事が声をかけることはありますか。

ADVERTISEMENT

佐藤 難しいですね。もう少し勉強した方がよかったとは言うのでしょうが、今と時代は違います。今のほうが勉強方法が多い分、迷ってしまいそうですね。

ピークを過ぎた40代での自身の伸びしろ

――再び、順位戦に関してうかがいます。46歳での昇級となったわけですが、40代でのご自身の伸びしろはどのようにお考えでしょうか。

佐藤 伸びしろはあるんですかね……。正直、プロになってからは今が一番弱いような(笑)。少なくとも四段昇段直後のほうが指す将棋に勢いはありましたね。私に限らず、棋士は25歳から30歳くらいまでが一番強いというのが自然かと。ただ現在、単純にそうとも言えないのはやはりAIの影響がありますよね。突然現れたツールで、もちろん簡単ではないですが、年齢を問わず誰しも力を伸ばす可能性のあるものだと思っています。

 

 先ほどは戦術面について話しましたが、自分はAIによって大局観をアップデートできたのも大きかった。年齢を重ねて成長が頭打ちになる中では革命的な出来事でした。自分にとってそれが一番はまったのが30代後半のことですが、その時が一番強かったかというと、また難しいですね。

――20代のころと比べて、衰えたことがあるとするなら、どのようなものでしょうか。

佐藤 少なくとも成績は30になってからガクッと落ちています。成績が落ちた理由としては終盤で踏み込みを欠いた、勢いのない手を指すようになったというのはありますが、なぜそうなったのかというと説明が難しい。ただ、間違いなく記憶力は落ちていますね。デビューから数年は指した将棋の棋譜が相当に頭に入っていましたが、それをだんだん引き出せなくなりまして、今では直近で指した将棋も危ないです(笑)。

 指し手の読みの精度は落ちているというより、精度を維持するための集中力を引き出すのにより苦労する感じで、集中さえできればそれなりに読めているので、読みの力そのものが大きく落ちているとは思いません。たまにとは言え、自分が十分に満足できる将棋を指せているので、そこは希望になっています。