後悔する一手、会心の一局は?

――これまでの将棋を振り返って、後悔する一手のようなものはありますか。

佐藤 やり直させてもらえるなら数えきれないほどありますが、それをいってもしょうがないですから。もちろんいろいろと後悔はありますけど、それを含めて人生だから「ない」としておきたいです(笑)。

――対してご自身にとっての会心譜とは?

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佐藤 会心譜をどうとらえるかが難しいですよね。パッとは浮かばないというのが正直なところです。やっぱり最初の順位戦昇級を決めたC級2組での一局が、初めて結果を出せたということでも、今振り返ってもうれしいですね。

――C級2組は10回戦のリーグですが、その期をトータルでみるといかがですか。

佐藤 2回戦で八代さん(弥七段)と指した将棋が、いい内容だったとは思います。私の後手番三間飛車で、事前に研究して、それを生かしきれはしませんでしたが、積極策が功を奏してリードを奪い、終盤もうまくまとめることができました。

「やはりもう1つ上がるのを第一に臨みたいです」

――改めて、初参加となるB級2組への抱負をお願いします。

佐藤 前期の結果を見ると5勝はしないといけないのはきついですよね。降級点を心配するほうが現実的なのでしょうが、やはりもう1つ上がるのを第一に臨みたいです。このクラスは実績のある方が多いので、自分がどのくらいやれるのかと、本音を言うと不安ばかりです。前回、C2からC1に上がった時は自分にも手応えがありました。それまでのスタイルを変えて、AI研究も活用してと。40歳を前に成長を感じられたことで前向きになり、順位戦以外での成績もよかったです。

 今回は下り坂の感があって、正直、なぜ昇級できたのか、理由は今でもわかりません。ただ他棋戦も含めて、指した将棋の内容としては勢いのある若手と、最後は負かされたとはいえ、それなりに戦えたという印象もあります。この1年で少しは勝率も上がったのですが、努力して実を結びましたとは正直言えません。ただ順位戦については最後、自力でプレッシャーのかかる中、昇級をつかんだことは評価できると思っています。

 

――将棋界全体の今後についてはいかがでしょうか。

佐藤 ここ数年は藤井聡太さんがずっと引っ張ってきて、それがこの先も続くのか、他の棋士が巻き返すのか、はたまた新たな新星が現れるのか、ということになりますよね。上の動向については自分が蚊帳の外でしょうがないんですけど、棋士である以上は自分が一生懸命やることで、全体のレベルを上げることにつながると思いますし、そのことが使命だと思ってやっていきたいですね。藤井さんとはまだ対戦したことがないので、それがモチベーションにはなっています。

写真=釜谷洋史/文藝春秋

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