密かに出まわるスナッフビデオ

小池:例えば、1989年に東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件が起きたときに、スナッフ映像が話題になりました。人を殺して死体を食べた映像を犯人が自分で撮っていて、誰も見たことがないけれども、ひょっとしたらあれがそうなんじゃないかっていう映像が流出していた。その後、2000年代になってネットが出てきた時に、実際に人を殺した映像が出ちゃいましたよね。

小池壮彦さん

:「1 Lunatic 1 Icepick」とか「ウクライナ21」とかですか?

小池:そう、そういうのもありますけど、公開処刑やったじゃないですか。あれも本当はインチキで、後にスタジオで撮ったのがバレちゃったみたいですけど。ネット社会になって、そういうことができるようになっちゃったんですよね。

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 それから今日までの25年は、メディア状況とのせめぎあいです。私は主に映像をやっていたのですが、当初、表現媒体の問題があって、2000年代にレンタルビデオがあんなにすぐにDVDに変わるとは、当時私も思ってなかったですからね。

 あの時、イギリスの古いホラー映画『血を吸うカメラ』が真っ先にDVDになりました。歌舞伎町のビデオ屋でビデオが2万円で売られてたんですよ。ボロボロのやつが2万円で新品は4万円。

三津田:ビデオ『生血を吸う女』が神保町で10万円でした。あれもその後、DVDになりましたけど。

小池:『血を吸うカメラ』のDVDが出た時に、あれぐらい古典的なものがDVDになるってことは、もうちょっと待てばあれもこれもと思いましたよね。それでもあの70年代ぐらいに出た本当にゴミクズみたいな心霊映像がDVD化されることはまずないと思ったので『呪いの心霊ビデオ』を書いたんですけども、その状況も2000年ごろにまた一気に切り替わりました。

 当時、DVDの映像を作って雑誌の付録にくっつけるスタイルが最先端で、それなりに部数も出てました。ところがそのすぐ後に、今度は配信の時代になるじゃないですか。いまDVDが付録でついてても誰も読み込めないですよね。でも、今度は配信になって、タブーというかいろいろな制約がなくなるかって言ったら、やっぱりYouTubeでも何でも以前に比べると表現的にかなり不自由になってます。結局、江戸時代からその繰り返しで、統制されてる中でどこまでできるかっていうイタチごっこなんですよね。

司会:大河ドラマの『べらぼう』じゃないですけど、結局そういう状況は今日まで延々と続いていますね。