アマプラ年会費が安いのはなぜ?
白黒をはっきりさせるベゾス氏の経営の中で、唯一の例外が日本だ。
日本のEC市場の流通総額は14兆6760億円で、6兆8000億円の流通総額を持つアマゾンはシェア45%超で首位に立つ。しかし日本には楽天グループが運営する「楽天市場」があり、シェア40%(流通総額約6兆円)でアマゾンと拮抗している。二強に比べると小粒だがLINEヤフーが運営する「Yahoo!ショッピング」も10%超(同1兆7000億円)を持つ。
米国、ドイツ、英国のように「圧倒的に支配」ができず、しかし中国のように「撤退」するのは惜しい。ECの巨人、アマゾンにとって、世界で唯一の「どっちつかず」の状態になっているのが日本なのだ。
「日本市場をなんとかしたい」というアマゾンの切なる思いは、同社での買い物の配送が無料になり、動画配信や音楽配信もついてくる「アマゾンプライム」の年会費の設定に如実に現れている。
表1に示した通り、日本の年会費5900円は米国の3分の1以下で、英国、ドイツよりもはるかに安い。これでも日本の年会費は高くなった方で、二度の値上げを実施する前の2019年までは3900円だった。ある業界関係者は「楽天市場が存在しなければ日本の年会費も2万円だった」という。
動画配信でNetflix、音楽配信でSpotifyなどと競っているアマゾンは、日本でも会費を値上げしてコンテンツ投資を増やしたいところだろうが、ECで楽天市場が頑張っているため思うように値上げできない。アマゾンにとって楽天は「目の上のたんこぶ」なのだ。
日本のEC市場で鎬を削るアマゾンと楽天市場。だが厳密にいうと両者のビジネスモデルは同じではない。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は両者の違いをこう表現する。
「アマゾンさんは型番商品を扱うネットの家電量販店。ウチは手作りの商品が並ぶアジアのバザール」
※本記事の全文(約8500字)は月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(大西康之「アマゾン・ドコモ連合の勝算 楽天、ヤフーの牙城は崩れるのか?」)。全文では、下記の内容を図表入りでお読みいただけます。
・アマゾンvs.楽天
・アマゾン・ドコモ連合の反撃
・楽天の逆襲
・宇野康秀の経営手腕
・孫正義の失敗
・EC経済圏を制するのは誰か?
■連載「裏読み業界地図」
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第2回 日産・ホンダはなぜ決裂したのか? 自動車野郎がいない日産エリート
第3回 ソニーとパナソニックの明暗 出井伸之がドイツで買った夢
第4回 NECと半導体 「電電ファミリー」失敗の歴史
第5回 【商社の三国志】日本流「投資銀行」のたくましき男たち 商事・物産・伊藤忠の生き残り戦略
第6回 【USスチール買収完了】日本製鉄の正念場 海外レジェンド企業買収の黒歴史をひもとく
第7回 薄型ディスプレイの落日 JDIはなぜ「ゾンビ企業」になったのか?〈産業革新機構の失敗〉
第8回 《今回はこちら》

