紅白で突然の卒業発表という“事件”
そして、この年大晦日の紅白歌合戦のステージであの“事件”が起こった。AKBが1曲目の「恋するフォーチュンクッキー」を終え、次の楽曲「ヘビーローテーション」の始まるまでのわずかな時間に、大島が突然、卒業を発表したのだ。瞬間視聴率も発表時の46.1%から、その話題がSNSを駆け巡るうち、「ヘビーローテーション」の歌唱直後には48.5%に上昇する。
この年、演歌界の大御所・北島三郎が50回目の出場を機に紅白から卒業すると事前に発表していた。ここから出場歌手全員でステージを去る北島を見送ろうというムードになっていただけに、それに水を差すかのような大島の突然の卒業宣言に対しては、関係者ばかりでなく視聴者からも批判の声が上がった。
しかし、彼女にも紅白で発表する相応の理由があった。翌2014年のインタビューでは、《昨年[引用者注:2013年]の秋、私から秋元[同:康]さんにお願いしたんです。紅白歌合戦で言わせていただけませんか、と。これまではみんな、コンサートやイベントで卒業宣言をしてきたんですが、それだとその場にいる人にしか見届けてもらえない。今まで応援してくれた全国の皆さんに、リアルタイムでお伝えしたいと思い、お願いしました》と説明している(『AERA』2014年4月7日号)。
北島が紅白からの卒業を発表したのは12月に入ってからである。大島の決断が固まり、秋元康に伝えたのが秋ということは、それと同時にスタッフのあいだでも卒業は既定路線として、セレモニーを行うコンサート会場を押さえるなど動き出していたのではないか。とすれば、北島が発表した時点で、彼女が紅白での卒業発表をとりやめるのは難しかったと推察される。
「私がいるままだと、席が空かない」
じつは発表の少し前、大島は秋元と行った対談(『AERA』2014年1月13日号に掲載)で、《優子も卒業を考えているんじゃないの》と話を振られると、あっさり認めていた。そのうえで秋元からさらにどういうタイミングで卒業したいのかと訊かれた彼女は、考えている時機はひとつだけではないとして次のように答えている。
《自分自身のことを考えると、これ以上、ここで新しい自分が見せられないかもしれないと思ったとき。それと、私がいるままだと、どうしても席が空かない、というのも大きいです》



