「岡田准一は本当は何者なのだろうか」と考え始めたのは、昨年末に映画『港のひかり』を劇場で見た時だった。
映画の中盤に登場し、舘ひろしが演じる主人公と車中で印象的な会話を交わす不思議な男が本当に彼なのかどうか、エンドロールで「友情出演 岡田准一」の文字を見るまで確信が持てなかった。事前にそんな情報はメディアにあまり出ていなかったし、『散り椿』などの主演作で見せるオーラとはちがう、映画のトーンにあった静かな、しかし味のあるバイプレイヤーの演技だったからだ。
それは単なる友情出演ではなかった。『港のひかり』パンフレットでは、舘ひろし主演のこの映画の成立に、岡田准一が大きな役割を果たしていたこと、藤井道人監督の言葉を借りれば「影の功労者」であったことが語られている。
「俺たちが時代を変えていく。日本産のものを作って世界に売る」
「まず、最初に岡田准一さんから電話がかかってきたんだよ」と、撮影監督をつとめた木村大作はパンフレットのインタビューで語っている。木村大作は2018年に岡田准一が主演をつとめた映画『散り椿』の監督であるのはもちろんのこと、黒澤明、深作欣二、降旗康男といった偉大な監督たちのもとで撮影を担当してきた、人生が日本映画史そのものと言っていい伝説的な映画人だ。当時84歳になっていた彼に、自分の半分以下の年齢の藤井道人監督と組んで撮影監督をやってくれないか、という相談を岡田准一が連絡役として持ち掛けてきたのだという。
俳優はたとえ自分の主演作であっても、監督と撮影監督の折衝に動き回ったりは通常しない。それはプロデューサーの仕事である。しかも結果的に友情出演することになったとはいえ、『港のひかり』は本来、岡田准一の作品ではなかったのだ。
今思えば、それはネットフリックスの『イクサガミ』で初めてプロデューサーをつとめる彼が、この作品でもそうした動きをしていたのだという言い方はむろんできる。しかし、それは木村大作に対して、岡田准一が映画人としての信頼をかちえていなければできないことだ。
「渡哲也さんとか、緒形拳さんとか、田村正和さんとか、原田芳雄さんとか……先輩たちに『岡田がんばってね』みたいなことをすごく言われてきて……俺たちが時代を変えていくみたいな。ずっと夢なんで、日本産のものを作って世界に売る」
昨年春、2週連続で放送された『情熱大陸』の密着ドキュメンタリーで、岡田准一はそう語っている。放送で彼が指を折りながら名を数える理由について説明はなかったが、彼らはもうこの世を去った名優たちなのだ。
『港のひかり』公開にあたってABEMAで放送された特別番組は『継承』と題されたが、実際に映画の内容も「東映ヤクザ映画」のオマージュと継承といっていいストーリーであった(舘ひろしが未来を託す少年の成長後を演じるのが、東映が生んだ世界的スター千葉真一の息子である眞栄田郷敦であるのは象徴的だ)。木村大作という“昭和映画史の伝説”と、藤井道人という“日本映画の未来”を接続するために岡田准一が影のように動いたのもそうした理由があったのだろう。

