藤井聡太王将に永瀬拓矢九段が挑戦する、第75期ALSOK杯王将戦七番勝負(主催:日本将棋連盟、特別協賛:ALSOK、特別協力:毎日新聞社・スポーツニッポン新聞社)の第6局が、3月18・19日にかけて名古屋将棋対局場(名古屋市中村区)で行われた。(全2回の1回目/後編を読む

藤井聡太王将(左)に永瀬拓矢九段が挑んでいる 撮影=勝又清和

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新手連発のチャレンジャー永瀬

 ここまでの星取りは藤井の2勝3敗。藤井の先手で、戦型は角換わりになった。両者とも最も得意とする戦型だ。

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 藤井はいつも通りの腰掛け銀で、バランス型の陣形に組みにいく。対して永瀬はコンパクトに構え、速攻を狙う。

 この進行を、藤井は渡辺明九段との第65期王位戦七番勝負(2024年)で経験している。その将棋は渡辺に陣形のスキを狙われる展開になった。藤井は前例から変化して、スキを作らないように9筋の端歩を突いたが、それでも永瀬は7筋の歩を突き捨てて桂を跳ねる手を選び、積極的に仕掛けていった。

 前述の王位戦では、藤井は4八金・2八飛という配置だったため、3九に銀を打つスペースがあった。だが本局では、藤井が金を上がる手に代えて端を突いたため、その変化はない。先手陣にスキがないのにどうするんだ? このままでは桂が取られてしまうぞ、などと思いながら見ていると、なんと永瀬は1筋の端歩を突き捨てて歩を垂らした! 第5局の端攻め同様、調べるまでもなく新手だ。

永瀬が意表の仕掛けを見せた

 なるほど、この歩を香で取れば4四に角を打つ手があり、香取りと角成りの両狙いになる。藤井は34分を使い、角を打つことでその狙いを防いだが、永瀬はかまわず1筋の香を走り、歩を打たせてから、自陣の整備に戻った。

 相手に角を手放させてから駒組みに戻り、こちらの持ち駒の角を好機に使おうという、なんとも凝りに凝った作戦だ。今回のシリーズ、永瀬は先手でも後手でも積極的に動くということで一貫している。それにしても永瀬の研究の持ち駒はいったい、いくつあるんだ?

 藤井も動く。角の利きを生かして4筋で歩をぶつけた。永瀬が歩を取らずに銀を上がって受けると、さらに2筋で継ぎ歩の攻め。永瀬が先手陣に歩を打って形を乱しにきたところで、藤井が封じ手にして1日目を終えた。