徳仁皇太子の答えは⋯

「私は山登りの中でも、沢登りが大好きなんです。冷たい水の中をばしゃばしゃ歩いて渡ったり滝をよじ登ったり、好きなだけ水が飲めるし、疲れたら適当な川原にテントを張って、夕暮れにイワナを釣って、流木を集めてたき火を起こして魚を焼いて、それを食べながら、星空の下で仲間と酒を飲む。最高の山旅です。殿下も本当は、そういう沢登りとかロッククライミングとか、そういうこともしてみたいのではないですか」

 徳仁皇太子の答えはこうだった。

「とても私にはそのようなことはできませんが、登山道であっても、歩いていると、沢を横切ることがあり、そういう時には上の方を見上げて、ああこの先には自分が本でしか読んだことのない、そういう世界があるんだろうな、と思うことはあります」

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 皇太子という地位にありながら、なんといういじらしい、つつましい答えなんだろうと思い、私は何か切なくなってしまった。この人は、大好きな自然の中で羽を伸ばして好きにふるまうことも、一人になることすらもできないのだ。

 不適切な比較をしていることは承知の上で記すが、私はこの時「いじらしい」と感じた自分の気持ちを振り返ると、雅子皇太子妃が1993(平成5)年の婚約会見の際に、プロポーズのやり取りについて述べた言葉との類似性を感じずにはいられない。

 徳仁皇太子が「僕としては雅子さんに皇室にぜひとも来ていただきたいとずっと思っているけれども、本当に雅子さんのことを幸せにして差し上げられるのだろうか」と控えめに話したのを、「小和田雅子さん」はこう受け取ったという。