「なんだかんだいっても、優しいな」ベラルーシに対する第一印象

 冬のベラルーシの日照時間はとても短い。午前9時頃に陽が昇り、午後4時過ぎには陽が沈む。気温は低く、マイナス5度を下回る日も珍しくない。早朝のカリンコヴィチ駅は深夜のような暗さで、まだ静まりかえっていた。ホームに乗降客はほとんどいなかった。

 旧ソ連の鉄道車両は、重厚かつ堅牢でありながらも洗練されたデザインで、その多くには共産主義の象徴である赤い星があしらわれている。共産主義の遺物だ。新たな車両はこれからも無限に作られる。しかし古い物はもう二度と作られることはない。私はすでに失われた物や、失われつつある物に心惹かれてしまう。

照井さんが拘束直前に撮影した列車(2024年12月1日)(『ベラルーシ獄中留学記』より)

 ベラルーシに入国したのは11月28日。3日前のことだ。

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「どこに行くのか?」「何をするのか?」「何日間滞在するのか?」「金はどれくらい持っているのか?」「出国用のチケットはあるのか?」

 個別に呼び出されて別室で尋問を受ける「別室送り」も覚悟していたが、入国審査官は私を特別視することなく通り一遍の質問をし、結果として何事もなくビザの上に入国スタンプが押された。しかも、荷物検査ではドローンにもお咎めなし。拍子抜けした。

「なんだかんだいっても、優しいな」

 それが、ベラルーシに対する第一印象だった。入国してからはミンスクを拠点に、バラノヴィチ、ノヴォポロックなど複数の都市に足を運んで撮影を試みたが、曇天で空振りに終わることもしばしばだった。12月2日の昼にはミンスクに戻り、午後5時発のリトアニアの首都ヴィルニュス行きのバスで出国するスケジュールを組んでいたので、残り1日。

 せっかくだから、カリンコヴィチでも鉄道を撮っておくか。なんの気なしに思い立ち、地図を眺めた。駅から徒歩で1時間ほどのところに、鉄道が通っていながら人気がなさそうなエリアがあり、そこがよさそうだった。郊外の線路脇は怪しい人間がいると通報されかねないので、腰を据えて撮影ができない。