バックアップ用のAndroidを取り上げられて

 警官に促されて歩く。停留所に、3台のパトカーが待機しているのが見えた。警官の数は全部で7人くらいか。たかが旅行者1人の職質の割にはずいぶん大げさだ。

 パトカーの前でiPhoneを取り上げられ、パスワードを求められた。肩に星の階級章をつけた警官が、私のリュックサックを開け、中身をチェックし始める。なかには、パソコンやカメラ、ドローンなど電子機器ばかり。撮り鉄には欠かせないツールだが、不信感を抱かれても文句は言えない内容だった。

 それにしても寒い。ようやく陽が昇ってきたとはいえ、12月のベラルーシは、ほぼ一日中氷点下の世界だ。露骨に寒がる私に、停留所にいた駅員が温かいお茶とミトンを手渡してくれた。

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 私は手持ち無沙汰で、iPhoneをはじめとした電子機器類、リュックサックの中身を執拗にチェックする警官たちを見ていた。

 そういえば。

 左ポケットに入っているサブ端末のAndroidをまだ確認されていない。データはバックアップ途中。アプリの削除はできるだけしたくない。でも、見つかったら大変なことになるかもしれない。ポケットがスマホの形に膨らんでいるから、バレるのは時間の問題だろう。

 申告を忘れただけなのだが、今さら出しても「なんで隠していたんだ!」と怒られるか、「なぜ2台もスマホを持っているんだ?」と問い詰められるのは目に見えている。言い出すタイミングを完全に失った。

 せめて、GooglePhotosとXのアプリだけでも消しておきたい。私はジャケットのフードやミトンを利用して死角を作り、Androidを操作しようとした。その瞬間、警官の1人と目が合った。

 見られた。

 警官は私を睨みつけ、おそらく「何、こそこそしているんだ!」というようなことを言って、Androidを取り上げた。画面には、先ほどの佐藤さんとのXのDMの画面が表示されていた。私は慌ててホームボタンをタップしたが、遅かった。

 警官は、いとも簡単にXを再起動すると冷たく問いただした。

「これは誰だ?」

 Google翻訳を通して、「友人です」と回答する。

 佐藤さんは、私を撮り鉄の道に誘ってくれた大切な恩人であり、特別な人だ。今回の道中でも、画像を送ったり撮影地のアドバイスを求めたりしていた。

 警官に佐藤さんの存在を知られてしまった。インターネットで知り合ったので詳しくは知らないと弁明したが、明らかに訝しんでいる。