「え? ウソでしょ。逮捕?」「テロリスト!」
私の態度がかんに障ったのか、大柄な警官に首根っこを掴まれた。貨物コンテナに身体を押し付けられ、まくし立てられた。
意味はわからないが、語気の強さから相当怒っているのは間違いない。
「Извините(すみません)」「Извините」「Извините」
大学の授業で教わったロシア語を繰り返すが、誰も聞く耳をもってくれない。あっという間に手錠をかけられてしまった。
「え? ウソでしょ。逮捕? え、困る。っていうか、やだ。ヤダヤダヤダヤダ」
心の声が日本語で漏れてしまう。駄々っ子のようになった私を、手錠をかけた警官はこう揶揄した。
「Террорист!(テロリスト!)」
「Нет! Ятурист! Турист!(違う! 私は旅行者だ! 旅行者だ!)」
必死に叫んでも、事態は変わらなかった。
私はテロリストとして逮捕されてしまった? 心拍数が高まった。なぜXだけでも早く削除しなかったのか。悔やんでも悔やみきれない。そもそも列車を撮っていただけで何も悪いことはしていないはずなのに、テロリスト扱いをされるなんて。人生で経験したことのない感情に襲われた。
金属製の手錠の冷たさと重さが、現実を突きつけてきた。本物の手錠だった。
列車を撮っただけで逮捕されるなんて
私は自分に言い聞かせた。警官に対する態度が悪かっただけで、無実とわかれば解放されるだろう。この手錠は、取り調べが終わるまで一時的に自由を制限するための物なのだろう。いくらヨーロッパ最後の独裁国家といわれる国でも、列車を撮っただけで逮捕されるなんてありえない。こんな理不尽がまかり通るはずがない。
しばらくして車の後部座席に乗せられた。見張り役の若い警官が助手席に座った。その間もほかの警官たちは、私のスマホをいじったり、リュックサックの中をかき回したりしている。
時折、若い警官のスマホに連絡が入る。ヘヴィメタルのような強烈なイントロで、着信のたびに動揺してしまった。
車で待つ間にも、列車が何本も通過していく。どのくらい時間が経っただろうか。2~3時間は経ったかもしれない。
少しほとぼりが冷めると空腹を感じた。助手席の警官にお腹が空いたとジェスチャーで伝えると、私のリュックサックを漁ってお菓子を渡してくれた。甘いカラメル入りのお菓子だ。数個を食べ終え空腹が満たされると、自分が買ったお菓子を食べる自由すらも奪われている事実に気づき、愕然とした。
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