台湾のリスクは高まっている
アメリカが半導体戦争に勝つためには、「台湾有事」にも備えておかなければなりません。その可能性は高まっていると私は考えています。しかし、それはトランプ大統領の政策や今年打ち出した「ドンロー主義」(西半球をアメリカの勢力圏に置こうとする外交・安全保障政策)とは、関係ありません。その可能性が高まっているのは、単に中国の軍事力が増大しているからです。
この10年来、中国はミサイル、艦船、戦闘機の配備数を増やし、軍事的な優位性を高めてきました。中国の政治的指導者がまだ台湾に侵攻しない唯一の理由は、中国が支払うことになる経済的及び軍事的コストを恐れてのことです。しかし、中国の軍事力が増大するにつれて、その指導者は台湾侵攻が成功するだろうと考えるようになるでしょう。時が経つほどにリスクが高まっていくと私が考えるのは、そのためです。
アメリカをはじめ多くの西側諸国が、台湾有事があっても、半導体の供給が滞らないような手を打ち、経済分野でのリスク分散を図ってきましたが、目を凝らしてみれば、リスク分散に最も成功しているのは、中国です。
中国は半導体の台湾への依存度を急速に減らしています。先ほども述べたように中国は先端半導体の分野では、AIに使う半導体を含め、必要としている量を十分に生産できません。しかし、自動車、機械、一般消費者向けのソフトウェアなど産業基盤全体に必要不可欠な非先端半導体の分野では、急速に自国での生産能力を高め、台湾への依存度を低下させているのです。
ですから、台湾のいわゆる「シリコン・シールド」(台湾に世界的な半導体企業であるTSMCの工場があることが、台湾侵攻への抑止力になっているという考え)は弱まっていると私は考えています。
アメリカ、韓国、日本などの西側諸国は懸命に、台湾への依存度を減らすために様々な方策を取ってきました。日本は熊本に、アメリカはアリゾナ州フェニックスにTSMCの工場を誘致しました。しかし、現実には台湾はいまだに世界の半導体サプライチェーンの絶対的中心であり続けています。ですから、台湾で何らかの破壊や混乱が起きれば、西側諸国には、経済的なカタストロフがもたらされるでしょう。
なぜ日本は凋落したのか?
では、これまでお話しした半導体をめぐる最新の世界情勢を踏まえた上で、復活を目指す日本の半導体産業が進むべき道を考えてみましょう。
まず、そのためには1980年代から90年代初頭にかけての日本の半導体産業の栄光がなぜ失われたのかを正確に捉えておく必要があります。
〈この続きでは、「半導体立国」復活のために日本の半導体企業が進むべき道などについて、重点的に語られています〉
※本記事の全文(約4500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年4月号に掲載されています(クリス・ミラー「先端半導体 ラピダス参入は絶好のタイミング」)。
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