「吉展ちゃんのお母さんから盗った金です」――ついに犯人は口を割った。

 昭和38年に起きた誘拐殺人事件。身代金は奪われ、捜査は迷宮入り寸前だった。そこから事件を動かしたのは、一人のベテラン刑事の執念だった。

「吉展ちゃん誘拐殺人事件」の顛末を、鉄人社の新刊『高度経済成長期の日本で起きた37の怖い事件』よりお届けする。(全2回の2回目/最初から読む

ADVERTISEMENT

写真はイメージ ©getty

◆◆◆

誘拐犯からの電話

 男はその後も数回、電話をかけてきて、自分が犯人であることを証明するため、地下鉄日比谷線入谷駅に吉展ちゃんの靴下を置いたと口にしたが、見つからない。

 また、上野駅前の住友銀行脇の電話ボックスに現金を持って来いとの指示もあったものの、男は現れなかった。結果、警察と村越家は電話の男が真犯人かどうか半信半疑のままで連絡を待つよりなかった。

 4月6日23時、男から7回目の電話が入った。このとき、男が吉展ちゃんが履いていた靴を「ビニールの尾錠についたやつ」と特徴を口にしたため、母親は初めて男が誘拐犯であることを確信する。そして2時間後の7日の午前1時過ぎ、具体的な取引法を指示する電話がかかってくる。

 その内容は、──警察に連絡しないこと。時間はこれからすぐ。受け渡しの場所は品川自動車。その建物の横に車が5台停まっている。前から3番目の小型4輪の荷台に目印として吉展ちゃんの靴を置いてきたので、そこに金を置け。金を置いたら真っ直ぐ家に向かうこと。金をもらったら、吉展ちゃんを1時間後に返す──。