部屋には巨大なファイルキャビネットが6基置かれ、どれも時系列に並べられた行動科学課の事件記録とそれに関する新聞の索引でいっぱいだ。環境は完璧だった。そこにいると騒ぎの中心にいるような気分になれたし、シリアルキラーやその犯罪について私たちが集めた捜査資料にどっぷり浸かれた。
私の使命は犯罪者のこんがらがった頭の中身を解きほぐし、共通する糸を見つけだすこと。そのために必要なものは何でも揃っていた。私にとって、犯罪パーソナリティ研究に細かいニュアンスや奥行きを加え、その知識をプロファイリングに適用してプロセスをもっと速め、一貫性を持たせる絶好の機会だった。
シリアルキラー特有の行動パターンが明らかに
まずデータの解析から始めた。この時点では、私たちは50人以上の悪名高き殺人犯にインタビューを終えていた。もともとの研究でレスラーたちが話を聞いた36人に加え、その後も私たちでインタビューを重ねたからだ。
誰もが躊躇なく胸中を話してくれた。どうやって標的を選んだか、犯行時の出来事、持ち帰った記念品、ポルノグラフィーが果たした役割、犯行後の行動、その後の期間に彼らが何を考えていたかなど、1人ひとりの犯罪傾向を明らかにしようとするあらゆる質問に、彼らは積極的に答えた。彼らの答えは驚くほど似通っていた。
分析してみると、犯行現場や犯罪者に見られるこの共通点は時代や場所に関係なく存在し、個人が偶発的におこなった暴力行為だとはとても思えないとわかる。
たとえばインタビューした殺人犯の51パーセントは平均以上の知能があり、72パーセントは父親と感情的に距離があり、86パーセントは犯行に先立って精神疾患の病歴あるいは診断歴があった。
この犯罪者の過去に関するデータから、一般的な人間行動と比較して、初めてシリアルキラー特有の行動パターンが明らかになった。おかげで犯罪プロファイリングは計測可能な研究データとしての基盤を持ち、研究結果がさらに実証されることになった。
殺人者の頭に入りこむリスク
私が最初にレスラーに結果を見せたとき、彼は安堵の息をついた。
「正直に言うと、いちばん恐れていたのは、俺がこの数年間ここでやってきたこととデータが、まったく、完全に、かけ離れているんじゃないかってことだった」
気持ちはよくわかった。私たちがしている仕事、つまり犯罪の性質を理解するために犯人の頭の中に入りこむことには深刻なリスクがあった。恐怖とじかに向きあわなければならないからだ。行動科学課の捜査官のあいだでは体重減少や胸の痛みに襲われることなど日常茶飯事で、なかでもダグラスは最悪のケースとなった。