鳴り響く非常警報

 と、館内に脱走を知らせる非常警報が鳴り響き、2人はすぐさま職員に身柄を拘束、事務所へ連行されてしまう。

写真はイメージ ©getty

 職員は激昂し、2人に対して暴行を加えようとしてきた。対して、大森は怯むことなく言い放つ。

「我々は新聞社の記者だ。昨日取材に来た記者も我々の仲間だ。貴様らが慌てて視察者を騙す様子をこの目で見たぞ」

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 そして室内の受話器を取り上げ、仲間たちの待機所になっている旅館に電話をかける。

「今すぐ来てください。殺される」と救助を要請。

 5分も経たぬうちに新聞社の待機班が乗用車とオートバイで施設に駆けつけ、大森の案内でカメラマンの向井が現場の証拠写真を次々と撮影。また、事務所では更生館の帳簿を押さえようとする小西らと、館長や職員が書類を奪い合っていたそうだ。

最後のチャンス

 大森と小西が救出された翌日の2月18日、毎日新聞は岡田更生館の実態を暴く記事を大々的に紙面に掲載する。対して、更生館側は「大森、小西両記者の悪意ある報道」と反論。

 1週間後、本館2階の大広間に会見場を設けて警察や報道陣を集めるとともに、清潔な服に着替えた収容者約200人を正座させる。そして、壇上にあがった館長は収容者たちに涙声で言うのだ。

「私は皆さんの親であり、先生なのです。親が子を叱るのは日本古来の伝統です。確かに、私は君らを叩いたりしましたが、本当に悪事を働いたことがあるでしょうか? 本当に悪事を働いたと思うのであれば、今ここで役人の前で手を挙げてください」

 館長の訴えに、会場は重い空気に包まれる。収容者はうつむいたままで手を挙げる者は1人もいない。これを見た大森が壇上に駆け上がり叫ぶ。

「私は皆さんを救うために命がけで潜入しました。今が最後のチャンスです。怖がったり強制されていてはいけません。虐待された人は手を挙げてください!」