4時間15分。
私は最後にこう言った。
「……分かりました。学校として、今回の件は重く受け止めます。今後の対応については、再発防止に努めます」
それは納得ではなかった。
降伏だった。
何が間違っていたのか、最後まで曖昧なまま。
けれど、ここで話を終わらせるには、その言葉を差し出すしかなかった。
「本当に再発防止してくださるんですね?」
母親は、ようやく少しだけ表情を緩めた。
「はい。教員への周知を行います」
その言葉を口にしたとき、私は喉の奥に苦いものが残るのを感じた。
誠実に対応した若手教員を、組織の都合で“指導対象”のように扱うことになるからだ。
母親が帰ったあと、応接室には静けさだけが残った。
私は椅子に深く沈み込み、しばらく立ち上がれなかった。
若手教員はどうすればよかったのか
翌日、私はB先生を教頭室に呼んだ。
彼は入ってくるなり、頭を下げた。
「申し訳ありません。自分の対応がまずかったせいで……」
「違う」
私は、思っていたより強い口調で言った。
「君の対応は間違っていない。階段で倒れそうになった生徒を、とっさに支えた。それは教員として当然の判断だ」
B先生は黙ったまま、唇をかんだ。
「もし触れなければ、生徒は落ちていたかもしれない。触れれば責められる。触れなくても責められる。そういう状況に、君は置かれていたんだ」
「でも、結果として保護者を傷つけてしまって……」
「違う」
私はもう一度言った。
「保護者が納得しなかったのは、君の判断が間違っていたからじゃない。最初から、学校が悪いという結論があったからだ」
彼はゆっくり顔を上げた。
私は面談の内容を簡単に伝えた。
何を説明しても届かなかったこと。
最後に、「世界中の誰が敵になろうとも、私だけは娘の味方だ」と言われたこと。
そして、話を終わらせるために、学校として再発防止を約束せざるを得なかったこと。