アリ戦は「負けたら破産」の究極の真剣勝負

 付き人時代の藤原喜明は、同時にスパーリングパートナーであり、自らが盾となって守るガードマンでもあった。そのため「猪木の影武者」「猪木の用心棒」と呼ばれた。そして異種格闘技戦をはじめとした危険な海外での他流試合の際などでは、常に猪木に同行し護衛する藤原の姿があった。

 そんな藤原が、猪木の「最高の試合」と呼ぶのが76年6月26日に日本武道館で行われた、ボクシング世界ヘビー級王者モハメド・アリとの格闘技世界一決定戦だ。

 今年、2026年はアリ戦から50年という節目の年。あらためて藤原に、間近で目撃したアリ戦での猪木を語ってもらった。

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「猪木さんは常に『プロレスとは闘いである』と言い続けて、猪木さん自身、命懸けでプロレスラーの強さと自分の強さを世間に認めさせる闘いをしてきた。その際たるものがアリ戦だよな。だから俺が観てきた猪木さんの最高の試合はアリ戦だよ。プロレス史上、あとにも先にもあれ以上の緊張感がある試合はないだろう。

 正真正銘の人生を懸けた闘いだった。大風呂敷を広げるだけなら誰でもできるけど、実際にアリとやるなんて、猪木さんにしかできないことだよ。闘うだけじゃなく、お金も用意しなきゃいけないだろ。何十億円だもんな。だから最初にアリ戦の話を聞いた時は『まさか!?』だったよな。

 実際に実現するってなっても『お金、大丈夫かよ?』って。さっきも言ったとおり、当時はまだ新日本が会社として軌道に乗ってなくて、給料が遅れたりするのも普通だったから、『そんな大金をどう用意するんだ?』って思ったし、借金して万が一のことがあったらどうするんだろうと思ったけど、やっちゃうんだよな」