「痛い! 痛い!」
右足にお産のとき以上の激痛を感じ、「痛い! 痛い!」と大声で叫んだ。のちに右足を複雑骨折していたことが判明。仲間の八〇代と七〇代の女性も骨折などの重傷を負った。高齢女性三人は、加療(治療)二〇〇日〜一年と診断された。
この高齢女性らの手当を試みたのが、石川や莉子ちゃんの救護を行った看護師だった。苦しむ女性から氏名や怪我の状態を聞き取り、「身体を動かさないでください。救急隊が来ているから、もう少し頑張りましょう」と励ました。救急隊の到着後は、怪我の状態によって搬送の優先順位を決めるトリアージのサポートを行った。
実は、この護国寺方面側の横断歩道で、真菜さんと莉子ちゃんとほぼ同年齢の母娘も撥ねられている。この母娘は親子用自転車に乗っていて、真菜さんよりも少し遅れ、同じ方向へ横断歩道を漕ぎ出した。母娘は飯塚の車と接触し、自転車ごと地面に倒れて軽傷を負った。
母娘の前を走っていた別の自転車もいたが、車が突入する前に渡り切って難を逃れた。
松永の自宅の位置を考えると、この横断歩道を使う方がほんの少し近道だった。松永によると、真菜さんは日常生活で移動が必要な際、常に最短距離を計算し、無駄な動きを一切しなかったという。つまり、赤信号の時間が少しでも長ければ、真菜さんは、この母娘と同じ横断歩道に移動し、命拾いをしていた可能性があった。
最終的に飯塚の車は対向車線の書籍運搬用トラックに接触して止まった。ほどなくして近くをパトロール中だった池袋署の男性巡査部長が乗った白バイがかけつけた。