後悔の2つ目…“逝くタイミング”から引き戻してしまった

――2つ目の後悔というのは。

佑太 親戚のみんなに挨拶を終えた9日目の夜の出来事です。一馬は急に意識がもうろうとして、いつもの眠りとは違っていたんです。そのまま、すぐに目を閉じてしまいました。

 後から思えば、それは、一馬の“逝くタイミング”だったのだと思います。でも僕は、まだ心の準備ができてなかった。なんとか命をつなぎとめたくて、一馬に使っている継続的な痛み止めを意図的に、止めてしまったんです。

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 胸に張っていた痛み止めのテープも剥がし、妻と私は一馬に声をかけ続けました。「まだ逝かないでくれ」と。一馬の目が開いたので、すぐさまウルトラマンの動画を大音量で流しました。

 僕は、萬田先生が例えた「着陸しようとしていた一馬の飛行機」を、無理やり引き戻してしまったんです。

――その後、どうなったのですか。

佑太 その後すぐは食事もできて、好きな動画も観れて、眠ったあともいつもの状態でした。でも10日目の朝、一馬は、コーヒー色の血をぶわっと吐きました。「もうだめだ。もうだめだ」と言い、かなりの痛みが襲ってきているようでした。

 

――その日にやって来た訪問看護師から「入眠剤を使わないのは、なぜですか?」と言われたそうですね。

佑太 家に帰ってきてから、レスキューボタン(痛みが強い時に薬を投入するボタン)の他に、ひねれば薬が入って眠れる入眠剤を使える状態でした。主治医からは「どうしても痛がる時に使うように」と言われていました。

 でも、本当に自分勝手ですけど、「起きている一馬と、絵本読んだり、話したりしたい」っていう気持ちがあって、「入眠剤を使う」という選択肢が頭から抜け落ちていたんです。

麻純 家に帰ってきてすぐは元気にもなったけど、眠っている時間も長かったのもあるよね。

佑太 うん。ご飯を食べながらテーブルで寝てしまうような状態だったんです。だから、起きている時がすごく貴重で。「1分1秒でも長く一緒にいたい」っていう僕の気持ちが、本人を苦しめてしまった。

――でも、同じ状況なら多くの人が同じ思いを持つと思います。

佑太 「家族は、こんなにも我慢できないものなんだな」と思いましたね。一馬がいつ旅立ってもいいように準備していたのに、心のどこかでまだ期待していたし、準備ができていなかったんです。