――優里南ちゃんも、しっかりとお別れをされたんですね。
佑太 はい。先生は僕たち親にも「大好きだよって伝えなきゃ!」と言ってくれました。それと、今後の一馬の状況について「呼吸がどんどんしづらくなってくると思う。それを見ると辛いと思うけど、我慢しなきゃだめ。また痛くてつらいことが長引いてしまう。ちゃんと声掛けしてお別れしてあげてね」と言って、帰っていきました。
しばらくすると、先生の言う通りのことが起こりました。たまに、必死に痰を出そうと咳をしたり、細い声が出たりしましたが、痰は出なくて。
「天国に行くまでずっと一緒だよ」「ずっと、ずーっと愛してるよ」
――一馬くんは、どういった最期を迎えたのでしょうか。
佑太 一馬は散歩が好きで、入院している時も車いすに乗って、廊下を1日に何十周と回りました。自宅に戻った後も、近所をよく散歩しました。家族の中では散歩を「ぐるりん」と呼んでいて、合言葉は「ぐるりん行こ」でした。
僕は家の中で「最後のぐるりん」をするために、抱っこをしました。「一馬、ぐるりん好きだったね」と言いながら、家の廊下をぐるぐると回ったんです。一馬の額が僕の肩に乗っていて顔は見えませんでしたが、後ろを泣きながらついてきてくれていた僕の父が、あとから「一馬、パパの問いかけに頷くように反応していたよ」と教えてくれました。
寝室に入り、家族4人で横になったのですが、一馬を横にするとまたゼロゼロが強くなって。ぐるりんをしている時は収まっていたので、抱き上げたくなりましたが、また先生の言葉を思い出して、ぐっと抑えました。
優里南は空気を読んだようにぐずらずに眠ってくれて。僕と妻と一馬の、3人きりの時間になったんです。
妻と一緒に、「痛いのは、苦しいのはもうおしまいだよ」「天国に行くまでずっと一緒だよ」「ずっと、ずーっと愛してるよ」って一馬に伝えて。抱っこして、抱きしめて、ほっぺにキスをして、言えなかった「ありがとう」をたくさん語りかけました。一馬はずっと表情を変えずに静かに聞いてくれていました。
寝室に入ってから3時間半後の午前1時40分に、一馬は僕と妻の腕の中で、静かに息を引き取りました。
撮影=石川啓次/文藝春秋
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