――その時、麻純さんは、どのように感じていましたか。

麻純 私はずっと、息子の痛がる姿を見ることがものすごくつらかったんです。だから早く楽にしてあげたい気持ちもあって。痛み止めや入眠剤を使うことは死へと直結する決断だと思っていたけれど、「苦しむ姿よりも、穏やかに逝けるように」という気持ちがありました。

 家族が我慢できれば、もっと穏やかな最期だったんじゃないか。自分たちがつらいから、悲しみを先延ばしにしたくて無理をさせてしまった。そう思います。

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後悔の3つ目…意識のあるうちに「ありがとう」を言えなかった

――最後の後悔を、教えていただけますか。

佑太 一馬の意識があるうちに、「ありがとう」と言えなかったんです。10日目の昼、入眠剤を使用したところ、一馬は呼吸をしつつも、目を覚ますことはありませんでした。僕は、本人に「自分が死に向かっている」ということをずっと伏せてきました。だから、「心から伝えたかったこと」を言えないままだったんです。

「パパとママの間に生まれてきてくれてありがとう」「一馬のパパで、幸せだったよ」と言えずにいました。そんなことを言ったら、気づかれてしまうと思ったからです。

 でも、一馬は妹やいとこたちへの「お別れの挨拶」をした。全部分かっていたんです。それを信じきれず、気持ちを伝えられなかったことを後悔しています。

――入眠剤を入れた後の一馬くんの状態は?

佑太 10日目の夜、優里南と一緒に身体を拭いてあげて、アロママッサージをし始めた頃、呼吸に変化がありました。喉で引っかかるようないびきがはじまると、痰が絡んだような「ゼロゼロ」という音がし始めました。もう呼びかけても、何の反応もありません。

 20時頃、萬田先生が往診に来てくださいました。先生は一馬の状態を見て、逝く準備に入ったことを私たちに告げて。そして先生は一馬に「よくやったよ。一馬! がんばった! パパとママのためにえらいぞ!」と声をかけました。僕はその横で、止まらない涙を流しながら、一馬の痛がっていたお腹を撫で続けました。

 優里南だけは一馬が旅立つ意味が分からず、「みんなー、泣かないでー」と笑顔で走り回ってて。先生が、優里南に「お兄ちゃん、死んじゃうんだよ。もう会えなくなるんだ。ちゃんと“ありがとう”ってお礼を言ってあげて。優里南は大丈夫だよって、大好きだよって」と伝えました。

 優里南は、一馬の耳元で「ありがとう」「大好きだよ」と、幼いながらにはっきりと言ったんです。