「夫が殺される!」

 その直後、1人目の男がステージに突進し、ショットガンで至近距離からマルコムを狙撃した。続いて2人目と3人目の男がステージに上がり、オートマチック拳銃で連続発砲。マルコムは胸や肩、腕、脚などに被弾し、その場で倒れる。会場は大パニックに陥り、人々が叫び、逃げ惑い、床に伏せたり出口に殺到。

 妻ベティは「夫が殺される!」と叫び、娘たちを庇い覆い被さった。救急搬送先のコロンビア・プレスビテリアン診療センターでマルコムの死亡が宣告されたのは15時30分ごろ。直接の死因は計21発の銃創による心臓・胸部損傷だった。

 犯人はすぐに逮捕される。トーマス・ヘイガン(当時23歳。後にムジャヒド・ハリムと改名)。NOIのメンバーだった彼はマルコムに銃弾を放った後、逃走しようとしたところ、マルコムのボディーガードの1人に足を撃たれ、負傷した状態で聴衆(マルコム支持者)に取り押さえられた。

ADVERTISEMENT

 ニューヨーク市警は他に少なくとも2人の狙撃者がいるとみて、目撃証言などから事件5日後の2月26日に同じくNOIメンバーのムハンマド・アジズ(同26歳)、10日後の3月3日にカリール・イスラム(同30歳)を逮捕する。

 第二級殺人罪で起訴された3人の裁判は1966年1月20日、ニューヨーク州最高裁判所で始まった。ヘイガンは動機を語らず、「自分が撃ったことは認めるが、単独ではない」と供述するとともに、他の2人は犯行に関与していないと訴える。