2021年11月19日、ニューヨーク州最高裁判所は正式に有罪判決を破棄し、2人に無罪を言い渡す。これを受けアジズと、イスラム(2009年8月に74歳で死亡)の遺族はニューヨーク市・州を相手に訴訟を起こし、2022年に約3千600万ドル(当時の日本円で約47億3千400万円)の和解金を受け取った。
アジズとイスラムに無罪判決が出る9ヶ月前の2021年2月、ニューヨークで一つの記者会見が開かれた。
ニューヨーク在住のレジナルド・ウッド・ジュニアなる男性が、マルコム・X暗殺当時、ニューヨーク市警の覆面捜査官だった従兄のレイモンド・ウッド(事件当時31歳)から2011年ごろ自分の死後に公開するよう手紙を託され、本人が2020年11月に87歳で亡くなったことを受け、この日、内容を明らかにしたのだ。
覆面捜査官が隠していた「ある手紙」
以下、2011年1月25日付の手紙の全文を記す。
〈私はレイモンド・A・ウッド。健全な精神と身体を有する者として、以下のことを告白します。私はニューヨーク市警の黒人潜入捜査官でした。1964年に採用された自分の任務は、公民権団体に潜入し、犯罪行為の証拠を見つけ、FBIがその指導者たちの信用を失墜させ、逮捕するための情報を提供することでした。私は黒人の人々の進歩にとって、後になって考えれば卑劣で有害な行動に参加してしまいました。これらの秘密を重い心で持ち続けながら生きてきました。
上司の指示で、私は公民権団体のリーダーやメンバーに重罪行為を犯すよう促すことを命じられました。具体的にはマルコム・Xの主要ボディーガードであるウォルター・ボウとカリール・サイエドの2人を逮捕し、1965年2月21日にオーデュボン・ボールルームで行われるマルコム・Xの演説の警備を担当できないようにすることでした。
そこで私はこの2人を「自由の女神像爆破計画」(自由の女神像、自由の鐘、ワシントン記念塔をダイナマイトで爆破するテロ計画)に関与したとして、事件5日前の2月16日に逮捕・拘束しました。彼らが計画に関わっていないことはわかっていましたが、市警の上司とFBIの捜査官から「断ったら、おまえにマリファナとアルコールの罪をでっちあげ逮捕する」と脅され、協力せざるをえませんでした。
2月21日、私はオーデュボン・ボールルームにいて、そこで現場から立ち去る姿を目撃されています。これらの行動を深く後悔しています。これは私の良心の告白です。この情報が、私がこれらの秘密を重い心と後悔とともに持ち続けてきたことを理解したうえで受け取られることを願っています〉
ニューヨーク市警とFBIが共謀してマルコム・Xの警備を意図的に弱体化させ、暗殺を容易にするという陰謀に加担したとする衝撃的な告白だった。
