刑務所を出所し、支援者の手厚い支えによって新生活をスタートさせた佐藤智明氏。しかし、重度の火傷による激痛と後遺症の苦しみから逃れるため、再び覚醒剤の誘惑に屈してしまう。

「やれば、痛みはなくなるぞ」――頭の中で悪魔の囁きが響き、後輩に覚醒剤を催促するまでに追い詰められた彼を、踏みとどまらせたものとは何だったのか? 新刊『先生は、元極道』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目)

現在は子ども食堂の運営や、薬物乱用の恐ろしさを伝える講演活動を行っている佐藤智明氏。彼はなぜ覚せい剤の誘惑をはねのけたのか?(写真:筆者提供)

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忍び寄る悪魔の誘惑

 それから僕は、菊池さんが借りてくれたアパートで新生活を始めました。

 火傷の影響で体が不自由だったため、訪問介護の助けを借りての生活です。

 菊池さんの会社が経営する居宅介護支援事業所「ほたる」からヘルパーさんが自宅に来てくれ、日に3度の食事や洗濯、掃除などを手伝ってくれます。それだけでなく、気分転換のために一緒に買い物に出かけたり、病院にも付き添ってくれたりするなど、身体が不自由な僕にとって本当に頼りになる存在でした。

 ヘルパーさんたちは、僕の誕生日にパーティーを開いてくれました。そのときにもらった寄せ書きのメッセージカード、あんなにうれしいプレゼントは初めてでした。

 でも、僕は変わりませんでした。