東大バイトテロ、[Apology] 、過学習……と、令和元年末の1ヶ月あまりで多数の流行語を生み出したのが、東京大学情報学環特任准教授(特定短時間勤務有期雇用教職員)、大澤昇平氏のTwitterでの暴走だ。今年9月に「東大最年少准教授」の肩書きを名乗って刊行した著書『AI救国論』(新潮社)がヒットし、非正規職員とはいえ日本で最高峰の大学でポストを得ていた若きAI研究者の奇行と没落を、複雑な気持ちで眺めていた人も多いことだろう。
ことの発端は比較的些細なことだった。11月11日、大澤氏は自身のTwitter上で、P2PソフトWinny開発者の金子勇氏(故人)を「犯罪者」と投稿。だが、このWinnyはユーザーによる著作権侵害が多発したツールだったものの、開発者の金子氏については2011年に最高裁で無罪が確定していた。現在、金子氏は日本のIT戦略の保守性ゆえに悲劇的な運命をたどった天才だったと評価されることも多く、大澤氏の冷淡な評価に一部で反発が起こった。
後から考えれば、この時点で謝っていればよかった。だが、大澤氏は11月19日から20日にかけて、Winny問題について根拠不明の陰謀論を投稿。さらに引き続いて、彼の社会的評価に決定的なダメージを与える投稿をおこなってしまった。
一発アウト発言と[Apology]
<私が関係筋から聞いた話によると、金子勇のWinny開発には中国共産党が関与している。
中国当局はその後、情報暴露型のワーム(Antinny/キンタマウイルス)を日本に蔓延させ、自衛隊の軍事機密をWinny経由で大量に流出させることに成功した。
これは国家レベルのスパイ活動であり、サイバー犯罪である。>
2019-11-19 23:43:33 https://twitter.com/Ohsaworks/status/1196801189481873408
<弊社 Daisy では中国人は採用しません>
2019-11-20 11:12:54 https://twitter.com/Ohsaworks/status/1196974667422035968
<中国人のパフォーマンス低いので営利企業じゃ使えないっすね (※引用リツイート)>
2019-11-20 13:21:39 https://twitter.com/Ohsaworks/status/1197007069464842240
言うまでもなく、これらは一定の社会的地位のある人間としては一発でアウトとみなされる発言であった。ゆえに東大や同学情報学環が非難声明を発表したほか、大澤昇平氏の寄付講座に寄付をおこなっていた各社が協力の打ち切りを表明。さらに大澤氏が経営するDaisy 社の提携先も提携停止を発表した。
一連の反応を受けてか、大澤氏は12月1日付けで[Apology]と題した謝罪文をTwitterで発表。問題の投稿は「限られたデータにAIが適合し過ぎた結果である『過学習』によるもの」だとするユニークな見解を示して逃げ切りを図ったのだが、後日になり東大からは事実上追放されてしまった模様だ。