さておき、ここでの重要なポイントは、本人か関係者が作成したかと思われる「大澤昇平」記事の第1版の段階で、すでに松尾豊氏の指導を受けたことを明記しており、さらに記事内の本人経歴の部分でも「松尾豊研究室」という単語が2回も登場する(つまり1記事内に「松尾豊」の名前が3回も出てくる)ことだ。
しかも、上記の「130.69.198.191」による最後の編集である9月10日14:11時点の版まで、Wikipediaにおける大澤氏の経歴は彼の最終学歴である東大松尾研での博士号取得“のみ”が記されていた。つまり、彼が福島工業高等専門学校出身で筑波大学に編入、修士号も筑波大院で取得したという経歴は書かれていなかった。
「東大生え抜き」「松尾研」を巡るWikipedia編集合戦
この9月10日14:11時点の版まで、Wikipediaの該当記事は(おそらく同一人物と見られる)「60.125.48.246」と「130.69.198.191」だけがほぼ編集している状態だった。しかし興味深いのは、『AI救国論』刊行直前の9月12日04:24時点の版から、これらとは別の人物と思われるIPアドレス「153.125.130.35」による記事の書き換えが繰り返されるようになったことだ。
ここで「153.125.130.35」が真っ先におこなったのは、「大澤昇平」記事の経歴欄に彼の高専卒と筑波大院修了の学歴を加え、さらに記事中から松尾豊氏や松尾研といった固有名詞を削除することだった。
その後、記事は大澤昇平氏の松尾豊氏とのつながりを強調したいユーザーと、それを削除したがるユーザーによる編集合戦に陥り、9月19日には一時保護処置(管理者のみが記事編集可能な状態にすること)が取られるようになってしまった。
Wikipedia記事の編集履歴からは「利害関係者によると思われる中傷」といった文言が見つかるほか、利用者たちが記事内容を議論するノートページでは「153.125.130.35」と、大澤氏を擁護する「60.125.48.246」と「130.69.198.191」の間で内輪向きの話題での論戦も観察できる。この編集合戦を仕掛けた「153.125.130.35」は、研究の場において大澤氏とごく近しい関係者で、しかも大澤氏を好ましからず思う人物である可能性が高いとみられる。