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 研究者の優劣は、本人の経歴のいかんを問わず論文の質と執筆本数だけで決めればいいように思える。だが、どうやら大澤氏が生きていた世界では、東大の生え抜き(=一般入試を突破した学部入学者)であるか否かや、松尾研との距離が近いかどうかが、長々と時間を使いWikipediaにかじりついて編集合戦をおこなうくらいの重要な関心事らしいのだ。

「東大の教養課程を受けていないから無教養」

 この「東大生え抜き」問題の根深さは、大澤昇平氏が中国人不採用ツイートで炎上した5日後の11月25日、彼の所属先である東京大学大学院情報学環准教授の伊東乾氏がウェブメディア『JBPress』に発表した謝罪記事からも見て取れる。

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 記事の題名は「東大発『ヘイト書き込み』への心からのお詫び 教養の欠如、人材育成の偏りへの大反省」だ。下記に特徴的な内容を引用してみよう。

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“この青年が雇用されているのは特定短時間勤務・有期雇用教職員というポストで、フルタイムの無期雇用教授会メンバーではありません。(略)一般に東京大学出身者は「東大最年少」などとは、まず書き込むことはありません”

“法学部などでは20代で助教授就任も普通にあるので、学内のことを知らない人間の書き込みとすぐに分かります。事実この青年は博士課程からの編入生で、学内事情など何も知らず、夜郎自大のラッパを吹いたように見えます”

“この青年の受けてきた教育で、一点、明らかに欠如しているのは「教養課程」と思われます。少なくとも東京大学教養学部で必修「情報」のカリキュラムを修めたなら…ここまで酷い無教養を晒すことはなかったと思います。私も長年担当しましたが、この科目を履修しないと2年生以上に進級することができません。(略)これらの書き込みには、学部1年必修レベルの情報リテラシー教育の欠如を指摘してしかるべきと思います”

 伊東乾氏の文意をやや荒っぽく要約すれば、大澤氏は東大に学部1年生から入学しなかったせいでまともな教育を受けていない無教養な人物(=学歴ロンダリング)だから差別ツイート問題を起こした、そもそも彼は東大の「最年少准教授」でもなんでもないただのバイト(=特定短時間勤務有期雇用教職員)なので東大の正規の教員(=無期雇用教授会のメンバー)とは本質的に異なる存在である――。といったところになるだろうか。

※『JBPress』の伊東乾氏の記事はなぜか12月に入ってから削除されているので、原文はインターネットアーカイブ上の記録を当たっていただきたい。