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連載この鉄道がすごい

複々線化の小田急が投入する新型通勤電車5000形。そこにある「らしさ」とは

電車の標準化時代、「個性」はどこに?

2020/01/20
note

「ステンレス車体にはこちらの青の方が似合う」

 その窓の下、外観の特徴としては、やはり2本になった帯が新しい。いままで1本だった帯が2本になった。たかが2本、されど2本だ。これは複々線完成のイメージも込めている。

 濃い青は「インペリアルブルー」だ。これは昔からの小田急の伝統色だと思ったら、実は違う。4000形を作ったとき、東急車輌(当時)のデザイナーから、「ステンレス車体にはこちらの青の方が似合う」と薦められた。そう言われてみれば、アイボリーに映えるロイヤルブルーは、ステンレス車体の1000形、2000形では色あせて白っぽく見えていた。最近は旧型もリニューアル工事でインペリアルブルーに変更している。上の細い水色はアズールブルーという。この色は小田急のブランドマークで使われているブルーのグラデーションから、インペリアルブルーに合う色が選ばれた。

 

 窓上にラインカラーがなく、スッキリと仕上げたところも小田急の流儀かもしれない。ホームドアの普及により、窓下の横帯は目立たなくなっている。だからJR東日本や東急などは窓上に横帯を巻く。路線カラーを見せて乗り間違いを防ぐためだ。小田急の場合は今のところ誤乗車の心配はないから銀色のままだという。そのかわり、小田急のブランドロゴと車体ナンバー、号車番号は車端部の上に配置された。これは実務的な判断だ。介助が必要な旅客を案内する時やお客様が忘れ物をした場合などで「小田急の何号車、あるいは何番の電車」とわかると都合がいいからである。

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 従来、車両外部の下側にあった非常用ドアコックも連結面の上の方に置いた。これもホームドアの普及に合わせた。在来車の非常用ドアコックも改造を進めている。

お客様に見えないところも

 運転席も見せていただく。前述のように運転席の真後ろに窓がないから、ここはふだん見られない場所だ。運転席に座るとタッチパネルの液晶モニターが3枚ある。航空機のグラスコクピットと同じ考え方で、メーター類はすべてここに表示される。正面のメインモニターは速度計やブレーキ圧力計の丸いアナログメーターがCGで表示される。隣の2つはサブ画面で、各車両の機器の監視、運転機器の操作スイッチのほか、運転士用、車掌用など数種類を切り替えて表示できる。

運転席にはタッチパネルの液晶モニターが3枚ある

 サブ画面は乗務員が好きなモードを表示して良いという。もっとも業務で使用するモードは自ずと決まってくるとのこと。大切なことは、あらゆる画面を表示できるサブモニターによって、より多くの情報を得られること、そして、万が一、どれかのモニターが故障したとしても、別のモニターで表示できる。

 これはJR東日本がE235系で採用した列車情報管理システム「INTEROS(インテロス)」を元に、小田急向けにカスタマイズした「N-TIOS(エヌティオス)」が搭載されている。各車両情報をイーサネットケーブルで収集し、地上の管理システムに送って常時監視できる。