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「70代以上の9割が発症」の白内障治療 4月から「得する人」と「損する人」の違いとは

医療保険に「先進医療特約」を付けている人は要注意

2020/02/08
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 将来保険医療に組み込まれる可能性のある新しい治療技術を、その有効性と安全性を確認するため、例外的に保険診療と組み合わせることが許された治療法だ。先進医療に指定された医療技術は、認可を受けた医療機関で行う限り、先進医療の部分は自費となるが、それ以外の部分には健康保険が適用される。

 そして、この「白内障手術における多焦点レンズの使用」も、現状は先進医療に指定された医療技術なのだ。

 つまり、術前の診察や検査や入院した場合は入院費は健康保険でカバーされるが、多焦点レンズ代や手術だけが丸々“自腹”になるのだ。

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 自由診療なのでレンズの価格設定は医療機関によって異なる。

「当院では片目につき58万円で手術をしています」

 と語るのは、横浜市青葉区にある「たまプラーザやまぐち眼科」院長の山口大輔医師。

「片目58万円」と聞いて、高いと思うか安いと思うかは人それぞれだが、普通は白内障は片目にだけ起きる病気ではない。両目を手術すると116万円。「う~ん」と唸るに値する金額ではある。

 

 ところが、この「多焦点レンズを使った白内障手術」が、この4月からもっと安く受けられるようになるかもしれないのだ。

「先進医療」から「選定療養」の変更で医療費が減額される?

山口大輔医師

「まだ決定したわけでないのですが、先進医療を外れて選定療養という別の枠組みに移ることになりそうなのです」(山口医師)

 また聞き慣れぬ用語が出てきた。

「選定療養」とは、健康保険で受けられる医療に、患者の希望で上乗せできる医療サービスのこと。入院する時の「個室料金」や、紹介状を持たずに大規模病院を受診した時に初診料に上乗せされる料金などがこれに当たる。

 どうやらこの4月から、多焦点レンズを使った白内障手術の料金体系は、個室料金と同じ括りにされる公算が大きいというのだ。

 そうなるとどうなるのか。続けて山口医師が解説する。

「先進医療も選定療養も“混合診療”という点は同じですが、保険診療で扱う部分が異なります。先進医療では手術費と多焦点レンズ代が自費でしたが、選定療養になると手術費は健康保険が適用されます。

 加えてレンズ代も、値段の高い多焦点レンズを入れても、本来健康保険が認められている単焦点レンズ代に相当する額は健康保険で面倒を見て、差額分だけを患者の自費で払ってもらう――という形。これにより、従来当院では片目58万円だった医療費が、25万円程度まで下がってくるのではないかと予想されます」

 前出の平松医師が付け加える。

「従来の先進医療は、厚生労働省の認定を受けた施設でのみ行える治療でしたが、選定療養になるとその縛りがなくなるので多くの眼科クリニックが多焦点レンズを使った白内障手術に参入してくる。そうなると自由診療の部分で価格競争が始まるので、都市部などでは“激安”をウリにする医療機関も出てくるでしょう」

 医療の領域で極端な安売りをされるのも不安だが、それでも医療費が下がることはありがたいことではある。