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「70代以上の9割が発症」の白内障治療 4月から「得する人」と「損する人」の違いとは

医療保険に「先進医療特約」を付けている人は要注意

2020/02/08
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少し複雑な「白内障の手術」の保険適用

 白内障の手術は、基本的に健康保険の枠内で受けられる。かかる費用(3割負担の患者の自己負担額)は片目につき4万円ほど。

 この時に使われる眼内レンズは「単焦点レンズ」といって、一定の距離にピントが合うように設計されている。

平松類医師

 

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「ピントの距離は患者さんの好みに合わせます。例えばデスクワークの人なら少し近視になるようにし、テレビを見る時間が長い人なら1~3メートル程度先に焦点が合うようにすることが多い。そして、遠くや手元のように“ピントが合わない距離”を見る時は、必要に応じてメガネをかけて調節する、という形です」

 と語るのは、東京都江戸川区にある二本松眼科病院の平松類医師。つまり、白内障手術は水晶体の濁りを取ることが目的であって、レーシック手術のように視力を調節する手術ではない、ということだ。

 しかし、そんな白内障手術でも、水晶体の濁りを取るついでに視力を改善できることもある。「多焦点眼内レンズ」を使う手術だ。

「多焦点眼内レンズ」の自己負担は例外的

「多焦点とは、複数の距離に対してピントが合うように設計された眼内レンズ。白内障手術の際にこのレンズを入れると、“遠くと近く”とか、“遠くと中間”といった複数個所にピントを合わせられるようになるので、メガネをかける必要性が減ってくるのです。早い話が、目の中に遠近両用メガネのレンズやコンタクトレンズを入れるようなもの」(平松医師)

 なるほど、これは便利そうだ。しかし、繰り返すがこの手術は、あくまで「白内障を治すこと」が目的であって、「視力回復」は健康保険の範疇の外にある。

 単焦点レンズなら保険診療で手術を受けられるが、多焦点レンズは保険外診療となり、レンズ代は自己負担となる。

©iStock.com

 保険診療と保険外診療(自由診療)を組み合わせることを「混合診療」と呼び、医療制度上許されていない。保険診療の一部に自由診療が組み込まれると、本来保険診療の部分を含めた全額を自費で支払わなければならないルールがある。

 ところが、これを例外的に認める制度がある。「先進医療」だ。