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 このように緊張が高まる中、サウジらアラブ4ヶ国は6月24日までにアルジャジーラの閉鎖やカタールのトルコ軍基地の展開停止、イランとの外交関係の縮小、テロ組織との関係断絶、4ヶ国に対する内政干渉の中止などを含む、13箇条の要求を突きつけ、10日以内に履行することを求めた(「カタールと断交の4カ国、13項目要求 アルジャジーラ閉鎖などCNN)。カタールはいったんは前向きに検討すると述べたが、当然ながら受け入れられない内容も多く、13箇条の要求を無視する結果となった。その後、アラブ4ヶ国の外相は7月5日にカイロで会合を開き、カタールの不誠実さを非難し、13箇条の要求は無効とし、さらなる経済制裁などを加えると発表した(「アラブ4カ国、カタールに新たな措置講じると表明ロイター)。しかし、具体的な制裁は未だにはっきりしていない。

豊富な天然資源を背景に発展したカタールの首都・ドーハの街並み ©iStock.com

カタールを反サウジ陣営のイラン側に押し出す結果に

 こうした対立が長期化しているのは、一つにはサウジにおける政治権力が新たに皇太子となったムハンマド・ビン・サルマン国防大臣に集中し、彼が主導する形で敵対するイランやシーア派との関係を持つ存在に対して徹底的に制裁を加えようとしていること、またサウジから見れば小国であるカタールが言うことを聞かないことで地域大国としての示しがつかなくなったこと、さらに、カタールから見れば、ハッキングによるフェイクニュースをでっち上げられ、理不尽な要求を飲むわけにはいかないこと、そして、サウジや他のGCC諸国とは異なった独自外交を進めることで、湾岸地域における独自性を維持したいといったことが挙げられる。

 しかし、興味深いのは、トランプ大統領がサウジを訪問し、アラブ諸国が協力してテロ対策を行うと発表したことが、かえって湾岸地域の結束を歪め、カタールを反サウジ陣営であるイランの方に押し出す格好になった、という点である。また、カタールにはトルコの軍事基地があり、アラブ4ヶ国はその閉鎖も求めていたが、それが結果としてサウジやアラブ諸国とトルコの対立を激化させる可能性もある。トルコはシリア内戦において、一時はロシア機の撃墜で対立したが、トルコが脅威と見ているクルド人勢力に対抗する目的もあり、ロシア機撃墜から1年で急速に関係改善を進め、今やシリア内戦では同盟関係にあり、トルコ・ロシアにイランを含めたシリア和平のためのアスタナプロセスを進めている。サウジらアラブ4ヶ国にアメリカが荷担し、イラン、トルコ、カタールにロシアが荷担するといった構図が出来つつある。

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 もっとも、これらの関係はシリア内戦やテロ対策といった部分的な同盟関係であり、冷戦期のような構造的な陣営間対立ということにはならないと思われるが、こうした構図がはっきりしてきたことで、サウジらアラブ4ヶ国とカタールの対立は容易に解決することが難しくなっていると言えよう。