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わたしの「神回」

2020/05/02

ボロボロの新社会人にこそ素直に染み入るメッセージの数々

 たった3秒だけでそんなことまでできるかよ~! と野暮なツッコミを入れることもできたのだが、声優の皆さんの迫真の演技、プロダクションI.Gによる美麗できめこまかな神作画、臨場感と緊張感を途切れさせないスピード感ある劇伴の組み合わせが、それらを、ひと目見ただけのオタクをも惹きこむ力のある映像に仕上げていた。

アニメ「黒子のバスケ」の公式Twitterより

「仲間を信じているからこそ自分も最良を尽くす」「最後の最後まで諦めない」「過去の挫折や昔信じていたものとの決別は必ずしも敗北を意味しない」といったメッセージも――それは言い方を変えれば「友情・努力・勝利」ではあるのだが――思春期や大学時代よりもボロボロの新社会人にこそ素直に染み入るもので、私はその日からすっかり「黒バス」のオタクになってしまうのだった。その後はアニメをリアタイ視聴し続け、コミックスを買い込み、「汗をかいてシャララがむしゃら~」(黄瀬涼太のキャラクターソング)と口ずさみながら勉強する女になった。

 人生で一度も買ったことがなかった少年ジャンプ本誌を購読しはじめたのもこの時だ。それまで憂鬱だった月曜が、ワクワクするものに変わった。月曜にジャンプを買い、木曜にアニメを観て、それ以外の曜日はずっとpixivをリロードし、新着作品を読み尽くし、オフ会に参加した。

©iStock.com

 Twitterのアイコンは赤司くんにしていたが、一番の推しは黄瀬くんだった。容姿・学力・運動神経と、なんでも人並み以上にできるがゆえに、バスケに対して周囲より真剣になりきれていないように見えた黄瀬くん。彼がシリーズ終盤に、試合での敗退後「みんなと勝ちたかった~~~」と大泣きするという回がある。電車でその回を読みながら「黄瀬くんがやっと本当の意味で海常の仲間になれた!!! これはもはや嫁入り、結婚式や!!!!!」と一人大興奮しながらツイートしたのに、駅の改札を抜けるときには、左手からジャンプ本誌がなくなっていたことがあり、さすがに自分でも驚愕した。内容に夢中になりすぎて、どこかで現物を取り落としていたのだ。地元のコンビニで、もう一冊買い直した。

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