だらだら飲んで勝つって「逆に偉い」
(行方九段はだいぶ酔いがまわってきました。藤井九段はお酒が飲めないので、ずっとジンジャーエールです)
行方 藤井さんが僕の妻に「なめちゃんは酒を飲まなかったらもっとやれるんじゃないか」と言ってくれた。
藤井 そんなこと言った記憶ないな。俺がなめちゃんに「酒を控えたら」なんていうわけないじゃん。昔観たジャッキー・チェンの『酔拳』が好きだから、なめちゃんは飲めば飲むほど強くなると。飲みながら指したら多分一番強い。将棋酔拳。酒を控えたら強くなるなんて、そんなベタなこと俺がいうはずない。だって、控えたら勝率上がったわけじゃないでしょ?
行方 うん。
藤井 よくこんなダラダラ飲んで、将棋で勝つもんだと思って。普通はもっと節制しないと。大体、私は将棋勝てないと今の生活が良くないんじゃないかと考えますよ。起きる時間を早くした方がいいんじゃないか。食事する部屋を変えた方がいいんじゃないか。将棋の本は我々にとって大切なものだけど、あまりに勝てなかったときに、自分の本以外全て捨てたんです。何かを変えなきゃだめだと思って。負けだすとそういうことを考えて、いろいろやってみました。40歳くらいから、その繰り返しですよ。でも、なめちゃんはずっとこんな感じだから。逆に偉い。なめちゃんは偉い。
行方 なんか変わんない。
藤井 俺もなめちゃんに負けず劣らず遅刻魔だったけど、あるときから絶対やめようと。ちょっと早めに家を出ればいいだけだと気がついたから。最近は一番乗りです。僕が来てもまだ誰も来ていない。
(行方九段、酔って半分寝ちゃいました)
藤井 こういう状態のときって、頭の中はどうなっているの? 俺がなめちゃんの悪口言ってもわかんないのかな?(笑)
写真=野澤亘伸
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