2月20日、右派社会党の佐竹晴記・衆院議員は森脇メモと同一とするメモを公表。赤坂の料亭「中川」での会合の出席者などが記され、中には犬養健・法相や石井光次郎・運輸相(のち衆院議長)、大野伴睦・国務相(のち自民党副総裁)ら、「大臣級がズラリ」(2月20日付読売夕刊見出し)。与党自由党の佐藤栄作・幹事長(のち首相)、池田勇人・政調会長(同)の名前も。
さらに2月22日の衆院予算委員会では、改進党の中曽根康弘・衆院議員(のち首相)が爆弾質問。有田が橋渡しした名村造船の贈賄資金から、石井運輸相と大野国務相に100万円ずつが渡った疑惑があると発言して混乱に拍車をかけた(2人は「事実無根」と否定)。2月25日、船舶保有トン数日本一の飯野海運など9海運会社に一斉捜索が入り、各社の重役が次々逮捕された。
2月24日付読売朝刊は「血税九百億でバクチ 海運界の乱脈ぶり」の見出しで船会社の経理の実態をこう報じた。「第6次の計画(造船)で、山下汽船が注文して造った船のレセプションのときなど、都内数百人の芸者がかき集められて、朝から夜まで船上の宴が続き、芸者が出払った各花柳界は開店休業の状態となった」「1回のレセプション費用は1000万円(現在の約8300万円)というのが相場だった」。
特に、検挙された業界の要人との仲がうわさになった芸者「秀駒」はメディアで取り上げられて人気者に。雑誌に手記を発表し、劇作家・菊田一夫が舞台化。新東宝映画「芸者秀駒」が製作、公開されるなど、話題を呼んだ。
捜査は核心へ
疑惑について田中二郎・佐藤功・野村二郎編「戦後政治裁判史録」はこう説明している。
捜査の手は次第に政界中枢部に伸び、自由党幹事長・佐藤栄作、同政調会長・池田勇人に対する疑惑が浮上してきた。日本郵船、大阪商船、三井船舶、飯野海運の4社から2人に贈られた各200万円、自由党に対する船主協会、造船工業会からの各1000万円などの性格が問題になった。つまり利子補給法案成立に対する謝礼なのか、それとも別の意味の金なのかという解釈の問題である。池田は、受け取ったのが渡米の直前だったため、餞別という見方が強まったが、佐藤は賄賂の疑いが強まった。渡した時期、渡した方法などから、200万円は佐藤個人の収賄、2000万円は自由党のための第三者収賄との疑いが濃厚となった。
そして、3月5日付朝日朝刊は社会面トップで、日立造船と西郷吉之助・参院議員の間の500万円授受の取り調べの過程で判明したとして、疑獄の頂点を示す出来事を報じた。
池田氏から事情聴取 造船疑獄 五百万円授受めぐり(東京)地検では金の贈り先といわれていた自由党政調会長、元蔵相池田勇人氏に対しさる(2月)28日の日曜日、都内某所に任意出頭を求め、参考人として極秘のうちに事情を聴取したことが明らかにされた。いわゆる“大物”政治家が造船疑獄に関し出頭を求められたのはこれが初めてである。
3月11日、東京地検特捜部は俣野健輔・飯野海運社長を特別背任容疑で逮捕。播磨造船、川崎重工などの捜索に着手した。同日付読売夕刊は1面トップで「造船疑獄 最大のヤマへ」「議員の逮捕請求必至」と報道した。
2020年 事件部門 BEST5
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