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綺麗事の広報に戻っちゃった

――潮さんとはだいぶ後になって、雑誌の『正論』で対談されていますね。それによると、当時の柳澤さんは、自衛隊の問題は「建軍の本義」がないことだとよく仰っていたとか。これはどういう意味なのでしょうか。

柳澤 旧軍であれば、いい悪いは別として、天皇を守る軍隊なわけですね。アメリカ合衆国軍隊はアメリカ合衆国憲法を守る。自衛隊はわが国の平和と独立を守り……、なんだけれども、じゃあわが国って何だというと、その実体がよくわからない。何に忠誠を尽くすんだという部分がないという意味で、それを建軍の本義という言い方をしていました。今でもある意味そうだとは思ってるんですね。

――自衛隊の広報誌は、現在は『セキュリタリアン』から『MAMOR(マモル)』に変わっています。こうした今の広報については、どうご覧になっていますか。

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柳澤 全然読む気がしないから、読んでないね。私は、等身大の自衛隊を出すときに一つ、自虐ネタは受けると思っていたんです。国民との距離を縮める上で、実はすごくいいやり方なんじゃないかと。ところが、今はそういう自分たちのあり方を振り返るような記事ではなくて、まぁ、綺麗事の広報に戻っちゃったなという感じですね。

防衛省や自衛隊には“保守系の人”が多い?

――ちなみに、よく読まれる雑誌はありますか。ご自宅でとられている新聞についても、もしよければ教えていただきたいのですが。

柳澤 雑誌はほとんど読みません。新聞は朝毎読を交代でとっていました。その都度洗剤とかチケットとか、景品をもらえたからね(笑)。ただ、読売とは5年くらい前に解約を巡ってトラブルがあって、それ以来とっていないんです。だから結果的に、今は毎日と朝日が交互に来ています。それは私じゃなくて、家内の担当なんですが。

――では、あまりメディアに対するこだわりはないですか?

柳澤 本当は日経をとりたいんだけど、高いし、あんまり景品もないしね(笑)。新聞に関しては、国際面がどれだけ充実しているかを見ています。センセーショナルな扱いではなくて、国際報道を客観的に、しかも地道にやっている新聞を読みたいと思いますね。

――『朝雲』(防衛省・自衛隊の専門紙)で自衛官の愛読書などを見ていると、保守系がやっぱり多いなと感じます。柳澤さんは周囲をご覧になっていて、防衛省や自衛隊にはやはり保守系の人が多いな、と思われますか。

柳澤 そうでしょうね。広報課長のときも、「課長、ようやく産経新聞に書いてもらいました」って喜んで来る人がいました。そのときは、「お前、産経新聞って赤旗より部数が少ないんだぞ」って返したりしましたけど。まぁ、そういう承認願望はすごく強いと思います。

――そもそも、柳澤さんはどうして防衛庁を選ばれたんでしょうか。入庁されたのが1970年ということで、当時は自衛隊に対する風当たりも今と比較にならないくらい強かったと思うのですが。