「最初はシホさんに入ってもらって、イケそうだったら、じゃあ私も~って。ハハハ」
「どれくらいの差で入店したの?」
「たしか1、2週間ですね」
SMに興味があった
「とりあえず確認しておくと、SMを選んだ理由って、やっぱりおカネだったわけだよね」
「うーん、そうだけど、興味もありましたね」
「シホさんと2人で、SMっぽいことをしてたとか?」
「そうですね。まああの、首輪買ったりとか、(お尻を)叩いたりとか……。あっちがドMなんで。向いてんじゃないって」
「カオルさん自身は、自分がMになる仕事をやってみてどうだった?」
「いや、痛いですね。フフフフッ」
「そうなんだ。じゃあカオルさんだけでもSMを辞めようってならないの?」
「私ですか? 私はまあ給料いいし、なんか求めてもらってるし……。それに楽しい部分もあるし……」
彼女自身は前にも口にしていたが、やはり「求められる」という承認欲求が満たされることが、金銭面での満足とともに、風俗での仕事を続ける動機として、かなりのウエイトを占めているのだろう。
私はもう一つ気になっていたことを持ち出した。
「たとえばそこでね、互いの嫉妬ってどうなってるんだろう?」
「そうですね。最初は私は大丈夫だと思ってたんですけど、意外とあっちが勤めて、お給料いっぱいもらったって喜んでると、ああ~辛い、ウ~、みたいな」
「嫉妬で?」
「そう。嫉妬みたいのがあって、私いっつも怒ってるんですよ、あっちを。こういうとこが辛いんだよって。それであっちが泣いて、ゴメンって仲直りして……。一回、こっちが辛いとか言ってから仲直りすると、しばらく大丈夫になるんで、私が。だからもういまは私が『いくら稼いだの?』で、シホさんから『×万円』って返ってくると、『あ、すごいじゃん』みたいな感じですね」
「なんかそういう関係性を見ると、やっぱりカオルさんが元からタチだったってことなんだね」
「そうですね」
男の人に対して恋愛感情を抱けない
「ところで、これからどうなっていくんだろう。男女ともにいけるバイセクシャルでいくのか、それともレズビアンだけかってことについては?」
「私ですか? そうですねえ。気持ち的には、男の人に対して恋愛感情を抱くのはできないかな~って思って。まあ別にセックスが……男の人とプレイするのは嫌じゃないんですけど、やっぱ感情的には女の子のほうが好きだなって……」
カオルの声はやや低めで、例えるなら女優の山口智子が静かに喋っているような雰囲気がある。その声色で言う。
「ていうか、男の人とはセックスも大丈夫なんですけど、やっぱ一緒に暮らしたりして、家族になるのって、難しいかな~って」